干し野菜の代表的なものとして、多くの方がまず思い浮かべるのが、切り干し大根だと思います。
「大根が安いから、つい一本買ったけれど、使いきれるかな?」
そんな時には、干し大根を作ってみませんか?
大根が旬で美味しくなる冬は、空気が乾燥していて、野菜を干すのに最適な季節。
太陽の下で干すことができれば最高ですが、家の中でも、失敗なく干すことができる方法をお伝えします。
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サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。
2011年からは特に、現代のライフスタイルに合わせた乾物の活用法の研究、発信に力を入れ、著書14冊(うち、乾物関連7冊)になりました。
- 食品ロス削減
- 省エネ
- もしもの時の備え
そして意外かもしれませんが、料理を時短にしてくれるのが乾物。
いいことだらけの乾物をふだんの食卓に取り入れる方法を、このブログでもいろいろお伝えしています。
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1 大根を干すために、特別なグッズは不要
大根を干すというと、何かしら特別なものがなければいけないと思っている人もまだまだ多いのではないでしょうか。
でも、実は、必要なものはそんなに多くないのです。
- 切るための道具
包丁、まな板
あると便利なもの ピーラー、千切りピーラーやシリシリ器、スライサーなどどれか - 干すための道具
ざる、網、ネットなど、なければ新聞やクッキングペーパーでも - 保存するための道具
木箱、紙箱、紙袋、密封するなら乾燥剤
では、詳しく説明しますね。
切るための道具
包丁、まな板は説明する必要はないかと思います。
ピーラーは、皮を薄く剥くのにとっても便利。
実は、もう一つ、ピーラーで皮を剥くことのメリットがあります。
大根の皮だけを干して切り干し大根の煮物のように料理すると、驚きの食感になるのです(あとで詳しく書きます)。
それには、ピーラーです〜っと薄く皮を剥くのがオススメなのです。
千切りにするための道具として、千切りピーラーや、シリシリを作るためのシリシリ機、野菜スライサーなどがあるとスピードアップできます。
もちろん、手で千切りにするのが苦ではないという人には不要ですけれど。
私は、以前はタイで買い求めたソムタム(グリーンパパイヤのサラダ)用のピーラーを愛用していましたが、セリア(百均)の千切りスライサーを買ってみたらとっても便利で使いやすく、最近はセリアの登場回数が断然多いです。
手を横に動かすよりも縦に動かす方が速いんですよね。
ただ、こうした形態のものだと、大根を最後まで千切りにするのは難しいので、最後は包丁です。
包丁は、好きな太さ、形に切れるのがやはりいいですね。
干すための道具
「野菜」を干すためには、干すために作られたネットの他、揚げ物用のバット、焼き網、オーブンの受け皿、ざるなど、さまざまなものが使えます。
ただ、「切り干し」大根を作るためには、ネットやザルなどが便利です。
焼き網など目が大きいものだと、乾くと小さくなって、どんどん下に落ちてしまうからです。
新聞紙やクッキングペーパーの上に広げて干してもいいです。
あとで触れますが、輪切りや割干しなど、自分の好きな形のものが作れるのが自家製干し大根のいいところ。
それにはバットや焼き網なども便利に使えます。
野菜を干すネットは、百均でも売られています。
ネットを使うメリットは、
*乾いて軽くなってきた大根が、器ごと風に煽られて飛ばされてしまう心配がない
*網目が小さいので、乾いて網目を通り抜けて落ちてしまう心配がない
*落ち葉や虫などの心配がない
*ザルより接着面が少ないので、下側も乾く
などがあげられます。
ただ、実際のところ虫が来ることは今までの経験上ないですが。
保存するための道具
保存するのは、紙箱、木箱、紙袋など、通気性のあるものがオススメです。
自宅で乾かしたものの場合、どうしても乾きムラが出てくるので、保存している間も通気性を保つことでカビを防ぐことができます。
せっかく乾かしたのに食べられなくなるのは避けたいですものね。
ビニールなどで密封して保存したい場合は、乾燥剤を入れてください。
2 切り干し大根の作り方
さて、では、どうやって干すかについてお話ししますね。
基本は、皮を剥いてから、できるだけ重ならないように広げて干す、それだけです。
とはいえ、ポイントがいくつかあります。
空気が乾燥している日に干し始める
上の3つの写真をご覧いただくとわかるように、空気が乾いていれば1日でもかなり乾きます。
実は、1日目にガッと乾かすことが大事なんです。
切り干し大根の産地、宮崎県で生産者の方にお話を伺いました。
太陽が輝き、霧島おろしの風が吹くため、宮崎では1日半ほどで完全に乾燥するとか。
そこまでの条件は望めませんが、空気が乾いている、できれば天気の良い日に干し始めることで失敗も少なくなります。
大根は9割ほどが水分なので、少しでも早く乾かすことでカビが生える心配が少なくなります。
家の中でも作れる
家の中でも干せるでしょうか?
太陽の光を浴びることで、大根に含まれる「遊離アミノ酸」の量が増えて、甘みや旨味が増すと言われています。
過去ブログに詳細に書いていますので、ご興味のある方はこちらをお読みくださいね。
ブログ「野菜を干すと旨味が増える理由を調べました」
なので、太陽の下で干すことができればその方が良いですが、室内でも大丈夫です。
幹線道路沿いに住んでいるの他、留守がちで天気が心配、花粉がついたものは食べたくない(これ、深刻!)などありますよね。
なので、家の中で干す方法を研究してきました。
ただ、室内で干していたとしても、家に居られる時間は太陽の下に出してあげると違うはず。
ちなみに、白菜の例ですが、3時間太陽の光の下で干すだけで、甘みが増すというデータがテレビで紹介されていました。
NHK BSプレミアム 「美と若さの新常識」2020年8月6日放送
農林水産物光処理研究所所長 青木秀敏氏が提供した資料。
実はこの番組に私も最後にちょこっとだけ出ていました。
番組ブログでは省略されちゃいましたが(涙)。
室内で加湿器を炊いているなど、湿気がある空間は避けてください。
ストーブの前などは、とても乾きやすいスペースです。
また、日中は外に出しておいたとしても、夜露に当たる心配もあるので、夜は家の中に取り込みましょう。
洗濯物と同じように考えると良いと思います。
雨や雪が続いてしまったら
こんな質問もよくいただきます。
外で干していたのなら、もちろん迷わず室内に避難!
ストーブの前などの乾きやすいスペースで干す、扇風機の風を当てるなどが考えられます。
扇風機の威力はすごいですよ!
あっという間に乾きます。
オーブンや電子レンジ、食品乾燥機を使ってもいい?
個人向けの食品乾燥機(フードドライヤー)も、使われるようになってきました。
実際、「とっても便利です」という声も聞きますが、私は持っていません。
調べてみたところ、「電気代は24時間で100円程度」とあるメーカーのHPにありました。
切り干し大根を作るのは60度で6〜7時間ということなので、30円程度と高くはありませんが、自然に任せても作ることはできるので、私はそれで済ませています。
業務用の食品乾燥機を作るメーカーのノウハウで作られた個人向けということで、お値段はしますが、こちらの信頼性が高いようです。
干し大根では不要と思いますが、天日干しでは失敗しがちなトマトやぶどう、バナナ、アボカドといった粘度の高いものも乾かすことができるそうです。
ちなみに、オーブンだと100度で2〜3時間。
とはいえ、これでも完全に乾くところまではいかないし、電気代も気になるところ。
また、電子レンジで作る方もいるようですが、水分を蒸発させるために、こちらも高温になります。
大根には、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの消化酵素が含まれていますが、100度のような高温では消失してしまいます。
食品乾燥機が60度程度の温度設定を推奨しているのも、酵素を壊さないようにという配慮からと思われます。
何れにせよ、天気の良い日に干せば2〜3日、条件がよくなくても1週間あれば完全に乾くと考えれば、わざわざ機械に頼らなくても良いかなと感じています。
野菜を干す、乾物を作る、使うというのは、食べものを捨てずに無駄なく使うこと(食品ロスの削減)や、省エネ(冷蔵庫が不要、運ぶ時のCO2削減にも)に繋がること。
そういう意味でも、野菜を干すには太陽や風の恵みを利用したいなと思うのです。
「ここ数日は、雨ふらないかな?」「風がいい感じだな」
そんなことを感じながら野菜を干すのも、実は楽しみの一つなのです。
切り干し大根を作るベストな時期はいつ?
以前、夏の大根を干してみたことがあるのですが、干すと黒ずんであまり美味しそうにできなかった経験があります。
乾物はいつでも手に入るので旬がないように感じられるかもしれませんが、実は、市販の乾物も、旬の時期に一年分をまとめて作っているのです。
なので、家で作るのもまた、大根の旬、冬の美味しくて安い時期に作るのがベストと考えています。
家庭菜園をしているのなら
宮崎の生産者を訪ねた時、畑から収穫してきたばかりという青首大根をみて驚きました。
スーパーで売られているものより、ずっと大きかったのです。
スーパーで売られている大根は、消費者の手に渡るまでの間の日持ちを考えて早めに収穫しているのだそう。
でも、切り干し大根に加工する大根は、「完熟」してから収穫して干しているのです。
生産から加工まで全てやっている、あるいはそうでなくても近隣の農家から大根が届くので、一番美味しくなるギリギリのタイミングまで土の中に植えておくことができるというわけです。
その分甘くなるとのことで、納得です。
家庭菜園で大根を育てているのなら、地上部分がニョキニョキ伸びてきてから収穫したものを干してみてはいかがでしょうか。
3 切り干し大根の保存方法
さて、出来上がった切り干し大根の保存方法や、保存にまつわる疑問にお答えしますね。
Q : 干した大根の保存期間
上に書いたように、紙箱や木箱、紙袋などで保存してくださいね。
そして、できれば梅雨前に使い切りましょう。
なので、半年くらいの日持ちと考えていただければいいと思います。
常温で大丈夫です。
昔から、日本では「乾物は梅雨前に使いきれ」と言われてきましたが、このことを知る人も少なくなってしまいました。
高湿度の梅雨時には、例えばカチカチの昆布でも湿気を吸ってシナッとなってしまいます。
切り干し大根も同じで、空気中の湿気を吸ってしまうことでカビやすくなってしまうのです。
また虫もわきやすいのがこの時期。
せっかく作ったものを捨てて無駄にしたくないので、大根の旬である冬に作って、梅雨前に食べきると覚えておいてください。
ただ、もし「梅雨までに食べきれない!」となった場合は、密封できるビニール袋&乾燥剤で保存する、冷蔵庫に避難するなどして、早めに使い切るようにしましょう。
Q : 茶色く変色しても食べることはできる?
食べても大丈夫でしょうか?
よく質問をいただくのが、これ。
保存している間に茶色く変色してしまっても、食べて問題ありません。
産地ではむしろ、「茶色くなったものの方が甘みが濃くて美味しい」とすら言われています。
ただ黒い斑点が出ている、あるいは赤くなっているなどの場合は、カビの可能性が高いので、残念ながら廃棄することになります。
なぜ茶色くなるのか、どうして美味しいのかについてはこちらのブログに書いていますので、ご興味のある方はお読みくださいね。
4 自家製だからこその楽しみと工夫
せっかく自分で大根を干すなら、「切干し大根」だけではなく、形状や品種にもこだわってみてはいかがでしょうか?
切り方のバリエーションを楽しみましょう
「切り干し」は、千切りにして干した大根。
でも例えば、もっと太く切る、短冊に切る、輪切りにするなど、切り方のバリエーションを工夫するとより楽しく便利になります。
ポリポリの食感が魅力の割り干し大根
輪切りの大根は存在感あり
こんな干し方も!
蛇腹に切って干しても
縦長薄切りの干し大根の例
こちらは市販品ですが、縦に薄く切って乾かしているのですね。
大根の皮も干して利用
最初にご紹介したように、「ピーラーで剥いた皮を干す」というのもオススメです。
赤大根を干すのもおすすめ!
普通の青首大根だけではなく、冬には時折店に並ぶさまざまな種類の赤大根もぜひ干してみてください。
最近は、冬になるといろいろな種類の大根を見かけます。
特に赤大根、目につきますよね。
色を活かしたいとなると、お漬物か生でサラダかにすることが多いと思います。
火を通した大根はそれなりの量が食べられますが、「色がキレイ!」と思って買っても、こういう食べ方ばかりだと使いきれないこともあるのではないでしょうか。
そんな時は、干してしまいましょう!
干した赤大根は、酢の物やサラダに入れると、酢と反応して鮮やかな赤色になります。
ぜひ、その色を活かしてくださいね。
茹でてから干すという方法も
切干し大根の煮物は大丈夫なんですが、サラダや和えものにすると、硬くて食べにくいというんです。
両親にも食べてもらえるようにするには、どうしたらいいでしょうか?
切り干し大根をサラダなどにして加熱せずに食べる時、硬さや辛さが気になるという方を時折見かけます。
そんな場合は、茹でてから干す「茹で干し大根」にするのもオススメです。
千切りにしてから、沸騰した湯で2〜3分茹でてから水気を切って干します。
生では辛さが気になる大根も、茹でれば甘く柔らかくなりますよね。
それと同じです。
また、普通の切り干し大根の場合、15〜20分ほど戻すのが普通ですが、茹で干し大根はすでに加熱されていることもあり、戻す時間も10分程度と短くなります。
こちらに詳しく書いていますので、興味のある方はお読みくださいね。
雪が降る地域ならではの凍(し)み大根
雪が降る地域では、屋外に干すと大根は凍ってしまいます。
でも実は、雪国だからこその絶品干し大根もあるのです。
軒下など雪が直接当たらない屋外に大根を干しておくと、夜の寒い時に大根は凍り、日中に温度が上がると溶けることを繰り返すことになります。
こうしてだんだん水が抜けていき、出来上がるのが凍み大根。
天然のフリーズドライ食品です。
これがもう、本当に信じられないほど甘く、スポンジ状になっていることで味の含みもよく、たまりません!
雪は降らなくても、夜から朝にかけての気温がマイナスになれば作れます。
寒い日が続くなあと思ったら、凍み大根作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
5 自家製干し大根おすすめ料理
干した大根は、煮物はもちろん、お味噌汁に、炊き込みご飯に、グラタンやサラダになど、いろいろな料理に使えます。
和食だけではなく、例えばこんなベトナム風のサラダにしても美味しいですよ!
「乾物マジックレシピ」(山と溪谷社)所収
大根の皮のシャキシャキ食感を体験してほしい
干した大根の皮の煮物
材料
干した大根の皮 30g、油揚げ 1/2枚、油 少々、調味料{戻し汁と出汁合わせて 350ml、醤油 大さじ1.5、みりん 大さじ1.5}
作り方
- 大根の皮はハサミで4~5cm長さに切り、かぶるくらいの水(分量外)に浸けて20分ほど戻し、水気を絞る。
- 1と、油抜き(熱湯をかけて油を流すこと)して千切りにした油揚げを、油で2分ほど炒めたら、調味料を加える。
- 沸騰したら弱火にして7~8分煮る。
*大根の皮の食感を味わうためにはあまり煮ない方が良いですが、硬いものが苦手な方は、もう少し長く煮てください。
*大根の皮が足りなければ、その分、普通の切り干し大根に変えても食感の差が味わえて楽しいです。
*好みで一味唐辛子や七味をふってください。
皮は、他にもお味噌汁や鍋物に入れても美味しいです。その場合は戻さずにそのまま入れて煮ても大丈夫です。
割干し大根の酢醤油漬けはポリポリ止まりません
割干し大根の即席漬け
割干し大根は、1時間ほど水に浸けて戻したら、4〜5cm長さに切って、酢醤油をかけて、あるいは黒酢と花椒で和えてしばらく置くと、ポリポリ美味しくなります。
輪切りの大根は食べ応えあり!
輪切りの大根は、歯ごたえもあり、食べ応えがあります。
お味噌汁や煮物はもちろん、カレーにも合うのでぜひ入れてみてくださいね。
カレーなど汁気の多い料理の場合は、戻さずにそのまま煮てしまって大丈夫です。
「乾物マジックレシピ」(山と溪谷社)所収
凍み大根はまずは煮物で深い甘みを味わって
豚かたまり肉と凍み大根の煮物
材料
豚塊肉 100g(脂身があるバラ、肩ロースなどがむいています)、凍み大根 50g、いんげん 10本、油 適量、みりん 大さじ3、凍み大根の戻し汁 200ml(たりなければ水を足す)、醤油 大さじ3
作り方
- 凍み大根は2時間程度水につけて柔らかくなるまで戻し、2cm角程度の大きさに切る。
- 豚肉も1と同じ程度の大きさに切り、いんげんは筋をとって4cm長さに切る。
- 鍋に油をしいて豚肉を炒め、色がかわったら1といんげんを加えて更に炒める。
- 3にみりんを加え、1分ほど煮たら、凍み大根の戻し汁と醤油を加え、蓋をして弱火で20分ほど煮る。
6 まとめ
冬に美味しい大根。
生でそのまま料理するだけでなく、ぜひ干して乾物にして、生とは違う美味しさを味わってみてくださいね。
さまざまな形、種類の干し大根を楽しめるのは、自家製ならでは。
無駄なく、美味しく!
あなたも、乾物を楽しむ仲間にぜひなってくださいね。
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