漬物製造業が許可制に〜原料殺菌義務付けも

原料の殺菌が義務付けられるキムチ
乾物クイズに挑戦

2024年6月1日から、漬物製造業が許可制になりました。

白菜漬けを漬ける

改正食品衛生法で漬物製造の衛生基準が厳しくなり、漬物製造業が許可制になりました。

3年間の経過措置期間が経過した2024年6月1日からは許可をとっていないと、販売用の漬物の製造ができないことになりました。

作り手の高齢化もあり、許可に必要な施設整備ができず、廃業を決める農家も多いそうです。

どんな施設が必要になったのか、詳しく知りたい方は、例えば、以下のリンクのURLにも紹介されていますので、ご覧ください。

徳島県ホームページ【食品関係】「漬物」を製造される方へ(営業許可が必要になりました)

漬物を作るときの衛生管理について

新生姜を洗う

また、営業許可が取れた上でさらに、漬物の作り方について、衛生管理が徹底されることになりました。

2種類に分けてこんな決まりができました。

その2種類は

  1. 包装後、加熱殺菌しない漬物→原料の殺菌が必要
    浅漬、キムチ、梅漬・梅干し、奈良漬
  2. 包装後、加熱殺菌する漬物→加熱が必要(中心温度75度1分)
    調味漬、たくあん漬、味噌漬

だそうです。

*分類について、より詳しくご覧になりたい方は、

厚労省HP 内 全日本漬物協同組合連合会 「漬物製造におけるHACCPの考え方を取り入れた安全・安心なものづくり

をご参照ください。

包装後加熱しない漬物は、原料の殺菌が義務付けられました

次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸けること(100mg/ℓで10分まらは200mg/ℓで5分)を推奨

あるいは

これと同等の効果を有する塩素性殺菌液や添加物として使用できる有機酸溶液などでも行える

とあります。

これが必要とされるもので、例として挙げられているのは例えば、浅漬け、キムチ。

梅干しはpHが低いこと、奈良漬はアルコール分が高いことから殺菌は不要です。

つまりは、今後は販売用に作る場合は、キムチの原料の白菜などすべてを、次亜塩素酸ナトリウムで殺菌してから使う必要があります。

包装後加熱する漬物は、中心温度75度1分の加熱が必要に

たくあんを漬ける

逆に例えばたくあんや味噌漬けなどは、原料の殺菌は不要ですが、包装後加熱殺菌(中心温度75度1分)が必要になります。

たくあんを加熱か〜

 

 

なぜ法律が変わったのか。死者8名が出た浅漬けの食中毒事件

食中毒

食品衛生法が改正されることになったのには、理由があります。

2012年8月に札幌市で、白菜の浅漬が原因の食中毒事件が起きました。

腸管出血性大腸菌(O157)による食中毒で、患者数169名、死者8名にも及んだのです。

出典 国立感染症研究所HP 「浅漬の食中毒事件を受けての漬物の衛生規範の改正等について」(2013年5月12日)

この事件をきっかけに、法律や衛生規範の改正がされることになりました。

現場の栄養士さんたちの声

食品加工

食中毒を防ぐのはとても大切なことではありますが、一方で加熱したたくあん、次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分浸けた白菜で浸けたキムチ(旨みや水溶性成分がかなり抜けそうな感じ)、違和感を覚える方も少なくないかもしれません。

でも、私の知人の、現場で働く栄養士さんたちからはこんな声も。

M.S.さん(栄養士)
M.S.さん(栄養士)
HACCPに基づいた工程になる、しいてはジア(次亜塩素酸ナトリウム溶液)での洗浄になって安心だ〜という感覚です。
浅漬けなんて生野菜なのだから、今まで殺菌洗浄無しで製品OKになっていた事実が恐ろしい…!
 Y.S.さん(HACCP管理者)
Y.S.さん(HACCP管理者)
事業者が洗浄時に殺菌、包装後に殺菌のどちらがなくても気にならないというのは危険です。

 

次亜塩素酸ナトリウム溶液って?

次亜塩素酸ナトリウム 消毒

そもそも次亜塩素酸ナトリウム溶液って、どんなものなのでしょうか?

次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は、

  • タンパク質に触れると食塩に変わる
  • 乾燥時には塩素ガスとして蒸発する

ので、低残留性で、安全性が高いとされています。

(参考 : 健栄製薬HP 「消毒薬のQ&A」)

一方で、感染症対策が専門の岩手医科大学の櫻井滋教授は

「濃度が低かったとしても消毒効果のある液体を長時間吸い込み続けると、人体に影響を与える可能性が否定できない

NHKの取材に答えています。

(出典 NHK 「消毒に使う次亜塩素酸ナトリウム 使用法に注意を」)

雑誌編集者の知人は、以下のように書いてくれました。

(大学)院で農芸化学を学んだ人間として、食品添加物は健康のために善だと断言できます。

そもそも食塩も塩化ナトリウムという添加物であり、次亜塩素酸ナトリウムと同くナトリウム塩で、どちらも殺菌効果を狙って使われます。

次亜塩素酸ナトリウムは自然に崩壊してただの食塩水になるため、残留性についても心配する必要は皆無です。
食の安全にとって最もリスクが高いのは今も昔も食中毒で、それを防ぐための添加物にはなんの問題もありません。

また、日本は他国に比べ残留農薬等の規制について非科学的なくらい厳しい規制を敷いており、こちらも心配するには及びません。というか規制緩和すべきです(おかげで農家は重労働になるし消費者にとってもコスト高)。

食に関連する方々の声

私の知人で食に関連するお仕事をされている方々からはこんな声も。

食肉製造コンサル
法改正は、廃業することに決めるトリガーになったのは確かだとは思いますが、それ以前に、零細の高齢の方ばかりだったので、廃業はいずれ時間の問題だったような気がしますね。

問題とすべきは、法改正ではなく、後継者問題のような印象を受けたので、今回廃業する方に声かけて、その技術を継承していく、というアプローチとかには意義が生まれそうな気がしました。

HACCP管理者
少し前にホテルで手作り酵素ジュースを提供してい保健所の指導を受けるということがありましたし、イベントで提供されたマフィンで食中毒が起きることがありました。

食品を提供する側はきちんとした食品衛生の知識が必要だと思います。

ただその結果、地域の特産品が失われることはとても残念です。

山形県在住農業&デジタルクリエイター
安全性が大切なのはもちろんですが、数年前から改正されることが通知されていても対応できず消えていく漬物の中にあるばばちゃんの味が消えていくのがもったいないし、出荷できなくなり廃業し生き甲斐を失うばばちゃん達が切ないです。

漬物が販売できなければ、漬物用の野菜を作っても仕方ないわけで、会社として漬物作るのとは違い、漬物作るばばちゃんは漬物用の野菜も自分で作るので生活そのもの。

うちの近所のばばちゃんが作る漬物は普通に落ち葉が入ったりしてますが、売り物でそれより美味しい漬物には出会ったことありません。

安全性も大切だけど、まわりのばばちゃん達の事が気がかりでした

愛媛県もち麦等生産者
日本語が又消えそうですね!この地域で使われていた(手前味噌と言う意味すら解らなくなりそうです!
 何を基準に、、、、、、?

まとめ

2024年6月1日、経過措置期間が終了し、漬物を販売用に製造するのは許可制になりました。

また、衛生規範についても、原材料の殺菌あるいは包装後の加熱が必要になりました。

食中毒は怖いです!それは間違いありません。

でも、素朴な手作りの漬物が消えていくこと、作り手たちの生き甲斐ももしかしたら萎んでしまうことをどう考えるのか。

考えさせられてしまいました。

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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