数年前のことになりますが、高野豆腐の製造会社、旭松食品株式会社の方から、
「当社の新製法で、従来品に比べて大幅に減塩となりました」
という説明を受けて、「高野豆腐ってそもそもしょっぱくないのに」と不思議に思ったことがありました。
さて、減塩とはどういうことなのでしょうか?
1 高野豆腐の塩分は「膨軟剤」である重曹
そもそも、高野豆腐に特に塩分を感じたことがありません。
でも実は、高野豆腐に添加されている「膨軟剤」に、ナトリウムが含まれているというのです。
膨軟剤というのは、高野豆腐をはやくふっくら戻すために加えられているもので、一般的には重曹(=炭酸水素ナトリウム)が使われています。
かつての高野豆腐は戻すのに時間と手間がかかり、出来上がりも、もっと固い食感でした。
でも、膨軟剤を加えることによって1分で包丁が通るし、5分もすればふっくら戻り、格段に使いやすくなったのです。
この膨軟剤を、重曹から炭酸カリウムに替えることで、ナトリウム量が大幅に削減されたというのです。
2 高野豆腐の塩分量〜重曹→炭酸カリウムなら減塩
膨軟剤が重曹 | 膨軟剤が炭酸カリウム | |
ナトリウム含有量(1枚あたり) | 7.26mg | 1.2mg |
食塩相当量(1枚あたり) | 0.018g | 0.003g |
(*ナトリウム含有量の数字は、旭松食品株式会社様からいただいた資料をによる)
では、どのくらい削減されたのかを見ていきましょう。
上の表でご覧いただけるように重曹(炭酸水素ナトリウム)が使われている高野豆腐には、1個約16.5gにつき、7.26mgのナトリウムが含まれています。
これを95%減、1.2mgにまで削減し、代わりに塩分排出効果が期待されるカリウムを約23倍に増やすことに成功したというのです。
(*旭松食品様からの資料には23倍、ホームページには25倍とあります)
ちなみに、ナトリウムの食塩相当量を計算する式は、
食塩相当量(g)=ナトリウム量(mg)×2.54÷1,000
ということなので、従来品は0.018gの食塩相当量ということになり、炭酸カリウムに置き換えることで食塩相当量0.003gになったということになります。
それだけのこと???とも思いましたが、調べてみると、、。
3 必要な食塩摂取量
1日の食塩相当量 | |
WHOガイドライン(必要量) | 0.5~1.3g |
日本人の食事摂取基準 | 男性 7.5g、女性 6.5g |
実際の平均摂取量 | 男性 10.8g、女性9.2g |
減塩が必要な場合 | 6g未満 |
世界保健機関(WHO)のガイドラインによれば、人が必要とするナトリウムは、 200〜500 mg/日。
食塩相当量にして、0.5gから1.3g程度とのことになります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によれば、1日に男性が7.5g、女性が6.5gとされていますが、実際の平均摂取量がそれぞれ10.8gと9.2g。
また、減塩が必要とされる病気の治療のためには、6 g/日未満の食塩摂取量が望ましいとされています。
なかなか減塩が難しいとされている中では、こうした小さな積み重ねが大事なのかもしれません。
実際、旭松食品でも、お客様からのニーズによって、減塩できないかという検討が始まったと聞きました。
減塩食を強いられている方からすると、この少しの差も切実なのでしょうね。
旭松食品株式会社は、この技術を開発したことで、2016年に、食品産業センターによる食品産業優良企業等表彰で農林水産大臣賞をとっています。
塩分を気にしている方は、膨軟剤に何が使われているのか、ちょっと気にしてみてくださいね。
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