「クスクスも乾物」と言ったら意外でしょうか?
クスクスは、世界最小のパスタともいわれ、常温で1〜2年程度の保存が可能、立派な乾物です。
まだ馴染みのない方も多いと思いますが、便利で美味しいクスクスの基礎知識から、戻し方、美味しいレシピまでご紹介します。
目次
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1 クスクスとは?
まずは、クスクスの基礎知識をまとめてみますね。
クスクスの原料
クスクスの原料はデュラム小麦で、パスタと同じです。
(なので、グルテンフリーではありません。)
キビのように薄い黄色で、直径1mm程度の粒状です。
そのため、クスクスは、世界最小のパスタとも言われています。
カロリーや糖質も、パスタのそれに準じると考えれば良いでしょう。
クスクスの製法
クスクスは、大まかには以下のような手順で作られます。
- デュラム小麦の粉に少量の水を加えて混ぜる
- 小さな塊になってきたら網などを通して粒を均等にする
- 蒸す
- (保存するなら)乾燥させる
手作りしてみたという、わかりやすい記事を見つけたので、リンクを貼っておきます。
自家製クスクスは相当美味しそうですが、なかなか大変そうでもありますね。
参考
- ギリシャのごはん 「手作りクスクス」
- sinice2006「クスクス作っちゃいました」→奮闘ぶりも面白いです
混同されやすい食材、料理
キヌアとの違い
キヌアとは、アカザ科の一年草で、小麦から作るクスクスとは、そもそもの原料が違います。
アンデス原産のキヌアは栄養も豊富で、国連総会が2013年を「キヌア国際年」と定めて以来、スーパーフードと注目を集めています。
キヌアの概要は以下のサイトに載っているので、興味のある方はご参照くださいね。
参考 コトバンク 食の医学館 「キヌア」
ブルゴル(ブルガル、ブルガー)との違い
ブルゴルは、全粒小麦(多くはデュラム種)が原料なので、栄養的にも優れているとされます。
小麦を粒のまま蒸したり茹でたりしてから乾燥させ、細かく砕いて作られます。
挽き割り小麦と言われることも多いのですが、ただ挽き割りにしただけではなく、加熱されているため、クスクス同様使いやすい穀物です。
粒の大きさは、上の写真のようにかなり小さいものから大きめのものまであります。
クスクスの元はブルゴルで、その後、クスクスのような製法のものも作られるようになったと言われています。
中近東の主食の一つで、クスクスより食感は固めです。
料理名のクスクスと粒の名前としてのクスクス
クスクスという時に、特定の料理名を指すこともあるので注意が必要です。
上の写真の、料理の下に敷かれているのがクスクスで、この料理全体もクスクスと呼ばれます。
料理のクスクスは、鶏肉や羊肉、ソーセージなどの肉類や、野菜、豆などがたっぷり入ったさらっとしたシチューのことを指します。
ハリッサ(アリッサ)という、スパイスを加えた唐辛子ペーストで味のアクセントをつけて食べることも多いです。
粒のクスクスを、フランス語ではクスクス・スムール(セモリナのクスクスという意味、セモリナというのは通常より粗く挽いた穀物のことを指す)と呼び分けています。
ここでクスクスというときは、クスクス・スムールのこととして話を進めていきますね。
ブラジルのクスクスは別物
「ブラジルでもクスクスが食べられている」とする記事をよく見かけますが、ブラジルのクスクスはこの系統とは違います。
「クスクス・パウリスタ」という料理は、サンパウロの人にとってお袋の味とも言われます。
名前はクスクスですが、小麦が原料のクスクス(スムール)から作るのではなく、キャッサバやとうもろこしの粉がベースで、たくさんの食材を使い、型を抜いたもので、ケーキのような見た目です。
ブラジルの惣菜・食材を扱うラテン大和さんのHPに写真やレシピがありますので、興味のある方はご覧くださいね。
ラテン大和 「クスクス パウリスタ」
クスクスの原産国とよく食べている国
モロッコ、アルジェリア、チュニジアなど、「マグレブ」と呼ばれる北アフリカの国々が発祥と言われています。
そこから、中近東諸国や、マグレブ地域を植民地にしていたフランスやイタリアへと広まりました。
1999年に住んでいたフランスの田舎町にも、クスクスを出す店がいくつかありました。
そこで知り合ったフランス人女性エマが、「優佳子はクスクス好き?私はだ〜い好き。」とクスクスの利点と美味しさを熱く語ってくれたのを今でも覚えています。
クスクスについてもっと知りたい!という人には、この本とてもおもしろいです。
2 クスクスの戻し方と保存方法
クスクスの賞味期限、保存方法
市販されているクスクスの賞味期限は、短いもので10ヶ月くらい、一般的には1〜2年程度に設定されているものが多いようです。
開封後も、異物が入らないように密封すれば常温で保存できます。
20年以上ほぼ家に常備していますが、この方法で虫がわいたことはありません。
クスクスの戻し方
熱湯で戻す
今手元にあるクスクスの箱には、戻し方がこのように書いてあります。
クスクスと同量の水を沸騰させ、食塩、油を少量加えたらクスクスを入れ、火を止めてからよく混ぜます。そのまま約7分蒸らせば完成です。
でも英語では、こうなっています。
- グラス一杯の塩水を沸かす
- 底が浅い皿に1を入れたら、グラス1杯のクスクスを振り入れる
- 蓋をして5分おく
- バターをひとつまみ入れる
- フォークでほぐしたら、出来上がり
- 英語版では5分なのになぜ日本語版では7分に変更されているのか不思議です。
- また、英語版で、図では150gのクスクスと200mlの水と描かれているのですが、文章から見ると同量と読めます。
そのくらい大雑把でも良いという理解で進みたいと思います。
私が軽めのランチをとる時には、クスクス50gと熱湯を60ml程度で十分です。
量を決める際の参考にしてくださいね。
蒸し器で蒸す
本場では蒸し器で蒸すのが主流のようです。
ローズウォーターで蒸すなどと聞いたこともあり、その香りたるや素晴らしいだろうなあと思ったものですが、モロッコの家庭で習ったという方々の記事を見ると、普通のお宅では普通にお湯で蒸しているようですね。
本場流クスクスの蒸し方について参考になるページ
- All About「本場北アフリカのクスクスの蒸し方」
- Cookpad 「クスクスの蒸し方 基本編」
熱湯以外のもので戻す
鶏ガラスープで戻す
娘が、ある時クスクスの匂いが気になると言い出したので、熱湯の代わりに熱々の鶏ガラスープでクスクスを戻してみました。
こうすると匂いが気にならず、娘も美味しく食べられるようになりました。
もし匂いが気になる方がいたら、この方法、ぜひ試してみてください。
鶏ガラスープの素でも大丈夫です。
もちろん野菜ブイヨンなどでも。
常温の水分で戻せる
熱湯で戻すよりは時間がかかりますが、30分ほど浸けておけば常温の水でも戻すことができます。
製造工程で加熱しているから、この方法が可能なのです。
穀物は加熱しないと基本は食べられないので、クスクスやオートミールのように製造工程で加熱している穀物を備蓄しておくのは、もしもの時の備えにもなります。
水以外の常温の液体で戻す方法は、レシピの項目でご紹介しますね。
戻したクスクスの保存法
戻した(蒸した)クスクスは、冷蔵庫に入れて2〜3日で食べ切るようにしましょう。
熱湯があれば、作業をはじめて10分ほどで食べられるようになるので、食べる分だけ戻すのがよいとは思いますが、もし戻しすぎてしまった場合、冷凍してもよいでしょう。
3 クスクスの食べ方 レシピ
カレーやシチューの付け合わせ、ご飯がわりに
フランスに単身赴任していた男性が、「日本米は高いし、炊くのに時間もかかるので」と、クスクスを主食にしていました。
クスクスはパラパラしているのでお箸で食べるのは厳しいですが、カレーやシチューなどスプーンで食べる料理であれば、ご飯の代用にもなります。
ただ、汁物をかけると、驚くほど水分を吸うので注意してください。
サラダに
フランス人が大好きなサラダ「タブーレ」
タブーレ、あるいはタブーリと言われるパセリとクスクスのサラダは、レモンをしっかり効かせて作ります。
東急百貨店東横店のホームページに、2014年8月に書かせていただいたレシピがあるので、ご参照ください。
リンクのレシピにはパッケージに従って戻すように書きましたが、上にあるように鶏ガラスープで戻して使うのもおすすめです。
キリッと冷やした白ワインとタブーレで休日のランチ、いかがでしょうか。
東急百貨店東横店 FOOD SHOW「夏になると食べたくなる味!タブーレ」
ヨーグルトで戻してサラダに〜乾物ヨーグルト
クスクスを無糖のプレーンヨーグルトとよく混ぜて一晩(7~8時間)おくと、クスクスがヨーグルトの水分=ホエイ(乳清)を吸ってしっとりと戻ります。
私が(DRYandPEACEとして)考案した「乾物ヨーグルト」と呼ばれる手法です。
これをベースに作るサラダは、ヨーグルトの酸味が爽やかでクリーミーな味わいが魅力です。
クスクスと寒天のサラダ
ヨーグルトで戻したクスクスを、棒寒天やいろいろな野菜とともにサラダにしたレシピを、NHKでご紹介しています。
ご参照ください。
NHK 料理レシピ 「クスクスと寒天のサラダ」
スモークサーモンとアボカドのクスクスあえ
スモークサーモンとアボカドのクスクスあえのレシピをNHKでご紹介していますので、こちらのリンクをご覧ください。
NHK 料理レシピ「スモークサーモンとアボカドのクスクスあえ」
ヨーグルトで戻したクスクスのスパイスボール
ヨーグルトで戻したクスクスに、クミン、コリアンダー、カルダモンなどのスパイスと塩、香菜のみじん切りを混ぜ、小麦粉を加えてボールにまとまるくらいの硬さにしたら、油で揚げます。
ビールのおつまみにどうぞ!
スパイスが揃わなければ、カレー粉でも美味しくできます。
戻したクスクスをパン粉がわりに
グラタンに
グラタンなどにパン粉の代わりに、戻したクスクスをのせて焼くと、プチプチ食感が新鮮です。
お湯で戻したものよりは、鶏ガラスープや牛乳、豆乳、ヨーグルトなどで戻したものの方がコクが出て良いと思います。
スイーツに
また、クランブル(というスイーツ)を作るときに、小麦粉で作る「クランブル」の代わりに、砂糖で甘味をつけたヨーグルトや牛乳で戻したクスクスをのせて、バターを所々にちらしてから焼くのも、プチプチ食感が楽しくて美味しいですよ。
NHKのサイトに、ベイクドトマトにクスクスをトッピングした料理のレシピが載っています。
NHK 「クスクスのベイクドトマト」
トマトジュースで戻すだけ、加熱不要のリゾット風
クスクスは、約4倍の無塩トマトジュースで戻します(約30分かかります)。
戻すときに、一緒に塩昆布やちりめんじゃこを適量加えると、旨みと栄養が加わります。
常温保存の粉チーズや好みのハーブを振って前ぜて食べれば、冷たいリゾット風の料理になります。
この料理は、防災イベントや料理教室で試食していただくと、いつもとても好評です。
加熱不要で食べることができるクスクスのような穀物加工品は、もしもの時に備えておくと役に立ちます。
東急東横店FoodshowのHPでの連載 2019年3月「クスクスは火を通さずに食べられるから、もしもの時にも強い味方」
クスクスとドライフルーツ&ナッツのスパイシーオレンジ風味
- クスクスを、八角やシナモン、クローブ、カルダモンなどのホールスパイスで風味をつけた100%のオレンジジュースで戻します(30分程度かかります)。
- ここに好みのドライフルーツやナッツを加え混ぜ、蜂蜜などで甘味をつけます。
これ、とっても好きな料理です。
全てのスパイスを揃えなくても大丈夫ですが、全部が揃うとかなりエキゾチックな風味になり、たまらない美味しさになります。
そのまま食べて白ワインに合う前菜に、サラダに振りかけても良いでしょう。
またヨーグルトのトッピングとしてもおすすめです。
この料理のレシピは「乾物マジックレシピ」(山と溪谷社)に掲載されています。
まとめ
硬質小麦、デュラム小麦の粉から作られる、加熱済みの世界最小のパスタ「クスクス」。
まだ家庭で使いこなす人は少ないかもしれませんが、もしも時に備えておくのにも良い、加熱不要の穀物の乾物です。
普段の料理から使い慣れていれば、いつもも、もしもも美味しい料理を作ることができます。
まずは、フランスで大人気のタブーレあたりから作ってみていただけたらと思います。
クスクスを少し身近に感じていただけたら、嬉しいです。
この本でも、クスクスを使ったレシピを数点紹介しています。
乾物に関する疑問を、こちらで受付けています。
ぜひお寄せくださいね。
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