とても手軽に豆を茹でることができる「保温調理」。
でもこれが、重大な健康被害につながるレクチンが残る調理法とする記述を見つけました。
保温調理でも有害物質レクチンは消失するのか
実際にはどうなのか、調べてみました。
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乾燥豆を「保温調理」する
乾燥豆を茹でる簡単な方法として、魔法瓶の中に入れて保温する、というものがあります。
一般的には、乾燥豆を魔法瓶の中に入れて、熱湯を注ぎ入れて放置するだけのことが多いようです。
私は、長年、鍋に豆とたっぷりの水を入れて、沸騰させてから5〜10分ほど弱火でさらに加熱をし、スロークッカー(極弱火で電気で加熱する道具)に入れることで、手間なく豆を茹でてきました。
- 同様に豆を加熱してから、炊飯器の内釜を温めておいて保温キー
- 同様に豆を加熱してから、保温調理器に入れる
- 土鍋に豆と水を入れて同様に加熱してから、毛布などで包んで保温
- 同様に豆を加熱してから、魔法瓶や水筒に入れて保温
といったことを、お勧めしてきました。
豆の大きさにもよりますが、3〜6時間程度で茹で上がります。
実は最近になって、FDA(アメリカ食品医薬品局 Food and Drug Administration)が、スロークッカーで豆を茹でることについて警告を出している!と知りました。
そこで、あれこれ調べてみることにしました。
2006年「白いんげん豆ダイエット」で下痢、嘔吐などの健康被害
ご記憶の方もいらっしゃると思いますが、2006年にテレビで紹介された白いんげん豆ダイエット法を試した視聴者が、「レクチン」が残存した豆を食べたことで、下痢、腹痛、嘔吐などを発症する事件がありました。
症状が出た人が159名、うち30名が入院し、メディアでも大きく取り上げられました。
厚労省HP 「白インゲン豆の摂取による健康被害事例について」
レクチンとは、動植物を問わず、生物全般に存在するタンパク質の一種です。
これをヒトが摂取すると、腸の炎症を引き起こし、腹痛、下痢、嘔吐などの健康障害に繋がってしまいます。
特に、いんげん豆に含まれる「フィトヘマグルチニン」は、植物レクチンの代表的存在として知られています。
番組では、「白いんげん豆を3分ほど煎って粉末にしてご飯にかけると痩せる」と放送したのですが、3分煎るだけでは豆の加熱が足りなかったために、レクチンが残っていたことが判明したのです。
豆にはレクチンが多いのか?
「レクチンフリーダイエット」なるものも世間にはあるようで、そのダイエット法では、豆は避けるべき食材に挙げられているそうです。
(私は未読ですが、「食のパラドックス 6週間で体がよみがえる食事法」という本で紹介され、日本でも実践する人が一定数いるようです。)
ただ、豆の中でも、これを多く含むものとそうでないものがあります。
福岡市保健環境研究所のデータを見ると、レクチン含有量が多い豆として、花豆、金時豆、手亡豆、うずら豆、虎豆などがあげられています。
白いいんげん豆の一種ではありますが、大福豆はレクチン含有量が少ないそうです。
参考 : 福岡市保健環境研究所保健科学部門「白インゲン豆による食中毒に伴うレクチン活性の分析事例」
FDAは何と言っているのか
FDAのレポートを見つけました。
BAD BUG BOOK Foodborne Pathogenic Microorganisms and Natural Toxins (2nd Edition 2012)
この254ページ目に書かれています。
大まかには、こんな内容です。
- red kidney beansが最も多くレクチンを含み、white kidney beansはその1/3ほど、broad beans(そら豆)は5~10%程度。
- 適切に調理すれば問題ない(レクチンは不活化する)
- 沸騰した湯で10分茹でれば不活化するという報告があるが、一般消費者は30分以上加熱すべき
- スロークッカーは豆料理に使うべきではない。豆の温度が75度に届かないことがその理由。
アメリカでよく使われる豆についてだけ調べている可能性があることには注意する必要がありそうです。
乾燥そら豆は、香川県を訪れたとき、醤油豆の材料として普通に売られていて驚きましたが、他の地域ではあまり一般的な素材ではないのではないように思います。
一方で、日本ではよく食べている豆について、データをとっていないことも考えられます。
また、スロークッカーの使い方がどういう方法だったのか、日本で売られているものと温度は同じくらいの上がり方なのかは不明です。
とういわけで、さらに調べてみました。
保温調理ではレクチンは不活化されないのか?
伝統的な豆のゆで方である、水に浸けて戻してから45〜60分茹でる方法であれば、全く問題なく豆を食べることができるのは歴史が証明しているわけですが、、。
では、保温調理の場合はどうなのでしょうか?
日本でデータは出ていないのか調べてみたところ、公益財団法人日本豆類協会が、女子栄養大学の協力を得て、雑誌「栄養と料理」に連載した調理実験のうちの一つにデータを見つけました。
金時豆 | 白花豆 | |
① 生 | 強いレクチン活性 | 強いレクチン活性 |
② 8時間水に浸ける | 強いレクチン活性 | 強いレクチン活性 |
③ ②の後、1時間加熱 | わずかな活性(問題なし) | わずかな活性(問題なし) |
④ 豆と熱湯を魔法瓶に注いで3時間 | わずかな活性(問題なし) | わずかな活性(問題なし) |
⑤ 豆と熱湯を魔法瓶に入れて5分 | 強いレクチン活性 | 強いレクチン活性 |
⑥ 同10分 | 強いレクチン活性 | 強いレクチン活性 |
⑦ 同15分 | 強いレクチン活性 | 強いレクチン活性 |
(公益財団法人日本豆類協会 豆と生活 2013年 「豆の基本的調理法に関する諸説を検証(その2)」の文章をもとに表を作成)
また、保温調理で15分たったところで急激にレクチンの量が減っているグラフも掲載されています。
保温時間が5〜15分の時点では、まだ危険なレベルでレクチン活性が残存するものの、3時間保温では鍋による通常のゆで方と同様の極めて低いレベルとなり、特段の問題はない状態と判断してもよい
*参考 公益財団法人日本豆類協会 豆と生活 「豆の基本的調理法に関する諸説を検証(その2)」齊藤章 2013
またこの記事では、豆を加熱した際のレクチンの活性の変化に関する各種文献の記述を総合するとさまざまな報告があると紹介しつつ、上記の結論を出しています。
- 60度では変化しない
- 75度では毒性が残る
- 80度以上の長時間加熱で徐々に活性が低下
- 沸騰状態では比較的短時間で不活化(3分、5〜10分、15分程度など)
- 一方で十分に調理しても完全には不活化しない
厚労省のホームページにも
「インゲン豆のレクチンは75℃での加熱では毒性が残るものの、沸騰状態で5~10分の加熱で壊れた等の報告があります。」
とあります。
結論
私の方法は熱効率を考えてのことではあったのですが、保温調理の前に使う容器を温めておき、また事前に5〜10分高温で加熱していることもあり、3時間以上保温していることもありで、問題ないと考えています。
また、長年、もう20年以上もこの方法で豆を茹でていますが、特に健康被害が出てもいません。
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