【乾物】「フェーズフリー」な家庭備蓄とは?

京急百貨店COTONOWAで乾物防災食講座

以前にも講師として呼んでいただいた、京急百貨店上大岡店のCOTONOWAにて、久しぶりに、リアルの講座の講師を勤めました。

少し前にも企画していただいていたのですが、コロナで中止に。

その時から「ぜひ乾物防災食講座をまた企画してください」という声が複数あったとのこと。
ありがたいことに満席となり、定員を3名増やしての開催となりました。

乾物は「フェーズフリー」な食と考えています。
そんな考え方をお伝えするとともに、それぞれの方、それぞれのご家庭にあった備蓄を考えていただくワークの時間を多く取らせていただきました。

*ちょっと短いバージョンを音声でもお話ししています。
https://stand.fm/episodes/5f7efd448f5bc0352a3a48e8

目次
1 フェーズフリーとはどんな考え方?
2 乾物のメリットとは?
3 「ローリングストック」を回すために
4 乾物をもしもにも活かすための基礎知識
5 ご紹介した料理
6 参加した方々の反応
7 感激したこと


1 フェーズフリーとはどんな考え方?


フェーズフリーという言葉をご存知ですか?

家庭での備蓄が必要だとこれだけ言われているのに、なぜ備蓄が進まないのか?
そんな疑問から生まれた考え方です。

これだけ天災が多い日本。
備蓄が必要とわかってはいても、

「いつ来るかわからないことに備える必要が本当にあるの?お金もかかるし、スペースだって必要」
「何を揃えたらいいのかを調べるだけでも時間がかかる。毎日忙しくて時間がないのに」
「どこに行けば買えるの?それすらよくわからない」

などなどの理由で、実際のところは、自信を持って「ウチは何かがあっても大丈夫な備蓄ができています」と言える人はまだまだ少数派なのではないでしょうか。

フェーズフリーとは、日常と非日常を区分して考えるからこうなるのであって、二つの「フェーズ」の垣根を取り去る(フリー)ことで、こうした問題が解消しようとするものです。

具体例をあげれば、例えばプリウスは燃費がいい、環境にいいなどの理由で選ばれている車ですが(日常時)、もしもの時は電池として使うことができる(非日常時)という価値を持ちます。

食でいえば、普段の食卓でも、もしもの時にも、手軽に美味しく料理できるもの。
乾物は、まさにそうしたものの一つだと思うのです。


2 乾物のメリットとは?


乾物とは、「食べものから水分を減らすことによって、常温で長期保存が可能な食材」と私は定義しています。

従来の非常食と呼ばれるものに、乾物というチョイスを加えることで、より良い備蓄が可能になると思うのです。

例えば
乾物は、ナッツやドライフルーツ、海藻類、豆類(通常の豆は茹でるのに時間がかかるので、もしもの時には向きませんが)、豆加工品、野菜類、穀物の乾物など、バリエーションが豊かです。
ともすれば炭水化物に偏りがちと指摘される非常食。
そこに乾物がプラスされれば、栄養バランスをとることもできます。

他にも、

添加物がない(ものがほとんど)
食物繊維が豊富(特に海藻類など、水溶性食物繊維が豊富)
非常食として売られているものに比べるとお値段が手頃
近所のスーパーで手に入る
普段の料理に取り入れやすい(包丁なし、加熱なしの料理も可能だし、時短にも)
ローリングストックに組み入れやすい

など、さまざまなメリットがあります。


3 「ローリングストック」を回すために


ローリングストックとは、備蓄したものを、使った分だけまた補充するということを繰り返すこと。
回転備蓄とも呼ばれます。

ローリングストックを心がける事で、賞味期限がうっかり切れてしまったということが無くなります。

ただ、ローリングストックを回すためには、自分や家族が普段から食べて美味しいと思えるものを、その対象に選ぶ必要があります。

非常食の中には、普段にはあまり食べたくないなと思うようなものも、残念ながらまだま多いです。
「もしもの時に食べられるように、普段に食べて慣れておきましょう」という声もありますが、これはどこかおかしいと思うのです。まずいものに慣れたいとは思わない人もいるでしょう。
私も実は、「非常食」を頂戴することもあるのですが、普段の一食にそれを食べたいとは思えず、賞味期限に達してしまったという経験が少なからずあります。

最近は非常食の中にも美味しいものも開発されてきているようですが、そういうものはお値段も張ります。
以前、「これは美味しいですよ」とサンプルといただきました。
でも一食1200円と聞いて驚きました。
その値段と味を勘案すると、やはり普段の食事でそれを食べようとは思えなかったのです。

このあたりは、人それぞれとは思います。
自分や家族は、普段や非常時にどういう食事をしたいのか。
好き嫌いや、食の傾向を勘案して、どんなものをローリングストックの対象にするのかを考える必要があります。
いくら栄養があるとか、料理が簡単だとか言っても、嫌いなものを備蓄しても、もしもの時に役立つはずもありません。また、普段食べないものを買い置いても、「ローリング」していきません。


4 乾物をもしもにも活かすための基礎知識


乾物をフェーズフリーな食として機能させるためには、やはり最低限の基礎知識は必要です。

例えば、どれがそのまま、あるいは戻すだけで食べられるのか。
火を通さないと危険なものはどれか。
どの乾物にどんな栄養が主に含まれているのか。

こうしたことを把握していれば、もしもの時に迷わずに使う事もできるし、栄養バランスの良い食事を作る事もできます。

これには、やはり普段から使い慣れていることが必要になるのです。
そして、日常の食に乾物を使い始めると、実はとても調理が楽に、時短になることに気づくはずです。
和食だけに縛られる必要もありません。


5 ご紹介した料理


今日ご紹介した料理は以下の4品。

<包丁不要、加熱不要な3品>
オレンジジュースで戻した干し人参と寒天のサラダ
豆腐で戻したドライフルーツと青菜の白和え
切干し大根、わかめ、ツナ缶の混ぜるだけ和え物

<包丁不要、加熱あり>
一つの鍋で完成 捨てる水無しスピードパスタ(トマト味)

生ゴミはゼロ。


6 参加した方々の反応


 ソーシャルディスタンスを取り、マスクを外している間は会話なしという中での講座だったので、普段の講座の時のように食べてすぐに感想を語り合うということは残念ながらできませんでした。

数名の方がその後に発言してくれた中では、特に高齢の方からは「人参や大根をもう少し柔らかく作ることはできないでしょうか」という声や、「自分は好きなんですが、家族の好みを考えるとウチには合わないと思うものもあります」という発言もありました。

また、ある方が「私はこの料理はあまり好みではなかったです」とおっしゃる一方で、「私は本当に美味しいと思ったのでぜひ作ってみたいです!」という場面も。

これは、最後のワークで、ご自身やご家族の好みや、普段買い置いているものを考えた上で、どんなものを揃えたらいいかを考えてみましょうという課題に取り組んだ後の発言でした。

備蓄というのは、本当にその家族ごとに千差万別であるべきなのです。
赤ちゃんや幼児がいるお宅、高齢の方と同居されている場合、アレルギーを持つ人など家族構成もそれぞれ。
また家族の好き嫌いを無視して一律に備蓄しても仕方ありません。

この最後のワークが、そんな気づきに繋がったら、、といつも感じています。
ローリングストックができないようでは備蓄しておく意味も低くなってしまいます。

アンケートを書いていただいた中には、こんなことも。
「乾物は思った以上に使いやすいので驚きました」
「工夫することが楽しいと思えました」
「偏りメニューの改善に使っていきたいと思います」
「毎日の食卓に、手早くできる乾物メニューを多く知りたいと思いました」
「ゴミが出ないのに驚き!」
「アイディア次第で様々な料理ができることに感動」
「先生方の知識が豊富で、乾物以外にも学びがたくさんありました」
「火を使わずに食べられるものがこんなにあるなんて!」
「テンポがよく、小ネタも多く、時間があっという間にすぎました」
「普段から乾物を料理して好みの味を見つけておこうと思いました」
「楽しかったです!」


7 感激したこと


久しぶりにリアルでの開催ができたこと自体も嬉しかったのですが(やはりその場で感想をいただけるのは嬉しいし、学びにもなります)、もう一つ、ちょっと感激したことがありました。

15年ほど前に、私の食育の講座を受講してくださっていたという方が、なんと千葉の柏から横浜の上大岡までいらしてくださったこと。
講座が終わってから声をかけてくださいました。
ブログを読んでいてくださって今回ご参加いただいたとのこと。
書籍も買っていてくださったと伺い、地道に活動を続けてきてよかったと改めて感じることができました。

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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