干し椎茸は、旨味と香りが魅力の食材です。
また、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが多く含まれていることでも知られています。
干し椎茸に含まれるビタミンDは、椎茸を天日干しにする、つまりは紫外線にさらすことで生成されます。
でも実は、天日干しだと干し椎茸の旨味や香りはあまり増えないというのです。
なぜなのか、そしてどうしたら旨味と香り、ビタミンDを全て実現することができるのかについて書きますね。
目次
サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。
2011年からは特に、現代のライフスタイルに合わせた乾物の活用法の研究、発信に力を入れ、著書14冊(うち、乾物関連7冊)になりました。
- 食品ロス削減
- 省エネ
- もしもの時の備え
そして意外かもしれませんが、料理を時短にしてくれるのが乾物。
いいことだらけの乾物をふだんの食卓に取り入れる方法を、このブログでもいろいろお伝えしています。
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1 干し椎茸は、天日干しでビタミンDが増える
先にも書いたように、ビタミンDはカルシウムの吸収を促進する働きを持っており、骨粗鬆症予防のためにも積極的に摂りたいものの一つです。
椎茸を天日に当てると、エルゴステロールという成分がビタミンDに変わります。
ただ、このビタミンD、1ヶ月もすると半減してしまうことも覚えておいてください。
2 天日干しでは椎茸の質が落ちてしまう?
椎茸の旬は、春と秋
上の写真は、2016年9月、別府に用事で出かけていた時に、宮崎県の干し椎茸の卸の会社の社長さん(当時)にお声がけいただいて、急遽宮崎県の高千穂に原木栽培の椎茸を作る方を訪ねた時のものです。
椎茸が育っているところを見ることができなかったのは残念でしたが、こうした場所で栽培されているんだなと、その空気感とともに記憶に残っています。
椎茸は文字通り「木の子」です。
椎茸はいつでもスーパーで買うことができますが、それは菌床(きんしょう)栽培されているから。
原木栽培の場合は、春と秋とが収穫期です。
かつては炭火や焚き火で乾かしていた
乾燥機がない時代、収穫された椎茸は、炭火や焚き火を起こして乾燥させていたと言います。
実は、収穫したての原木栽培の椎茸は驚くほどみずみずしく、水分含有量が多いのです。
千葉の大多喜の友人の原木椎茸栽培の農家さんから、たまに生椎茸を分けていただくのですが、フライパンで焼くと水が染み出してくるほど。
それほど水分が多いので、椎茸の収穫時期の春や秋の日差しでは、太陽の光だけだと乾き切る前に椎茸が劣化してしまうと言います。
ちなみに国産の干し椎茸のほとんどは原木栽培、輸入物のほとんどは菌床栽培です。
3 グアニル酸の生成量を増やすには、60度が必要
生椎茸から干し椎茸になる中で生まれる旨味「グアニル酸」は、酵素の働きでリボ核酸が分解されることによって生じます。
このリボ核酸分解酵素が最も良く働く温度帯は、60〜70度です。
干し椎茸の香り成分である「レンチオニン」もまた、熱と酵素の働きで生じるとされます。
*「熱と酵素の働きで、レンチオニンという香り成分が生成される」と、全農をはじめ多くのサイトに書かれていますが、元となるデータをまだ探せずにいます。どの程度の温度、熱なのかが、なので不明です。
4 干し椎茸は天日干しには向いていない?
自分で干してみた印象
実際、自分で椎茸を干してみると、
- 縮んでカチカチになる
- 市販のもののようにふっくら戻らない
- 香りが少ない
- 旨味が少ない
といった印象があります。
もしかしたら菌床栽培の椎茸だからかもしれないのですが。
原木栽培の生椎茸を見かけると買ってその美味しさに舌鼓を打つのですが、残念ながら見かけることは多くありません。
市販の「天日干し」干し椎茸も機械乾燥している
干し椎茸のパッケージに「天日干し」と書いてあるものも見かけますが、実際のところ、ほとんどのメーカーは乾燥機で温度を調節して乾燥させた後に天日干しをしています。
(あるいは、機械乾燥してから紫外線を照射して作っているところもあります。この場合は当然「天日干し」とは表示しませんが)
先に書いたように、そうでないと干し椎茸ならではの旨味や香りが出ないからです。
「昔ながらの天日干しだけで手間暇かけてやっています」とサイトなどに書いているメーカーさんが、もし炭火や焚き火を併用して温度をあげるなどの工夫をしていないのであれば、旨味はむしろ少なく、あまり美味しい干し椎茸にはならないはずです。
「天日干し」を強調するのは、消費者が「天日干しの方が良い」いうイメージを持っているために、そこに訴えているにすぎません。
5 旨味もビタミンDもたっぷりの干し椎茸を食べるには?
旨味もビタミンDもたっぷりの干し椎茸にありつく方法
さて、旨味たっぷりで、かつビタミンDもたっぷりの干し椎茸を食べるにはどうしたら良いでしょうか?
まずは以下の2つの方法が考えられます。
- 機械で高温乾燥した市販の干し椎茸を購入する。
- 家庭用の食品乾燥機を使って60度くらいで乾燥させたあと、天日干しする。
いずれの場合も、食べる前に干し椎茸を天日干ししてから調理するのが大切です。
先にも書いたように、干し椎茸のビタミンDは1ヶ月で半減するとされます。
酸素と結合して元のエルゴステロールに戻ってしまうのです。
もちろん今日食べる分を今日太陽に当てる必要があるわけではなく、数日前でも問題ないです。
フードドライヤー(食品乾燥機)を選ぶなら
コロナの影響もあって、家庭用の食品乾燥機もずいぶん種類が出てきました。
- タイマーがあるもの(半干しなどもしやすい)
- 70度まで温度が上がるもの(美味しい干し椎茸作り必要)
- キッチンに収まるサイズ
といったところで考えると良いと思います。
コンパクトさで選ぶなら
棚の高さの調節ができ、短時間での乾燥が良い場合は
といったところでしょうか。
1時間太陽に当てるだけで、ビタミンD量が24倍に
さて、ではどのくらいの時間、太陽の光を当てれば良いのでしょうか。
神戸女子薬科大学の実験では、紫外線を当てることで上記のグラフのようにビタミンD量が変化したと言います。
1時間太陽に当てるだけでも、ビタミンDはこんなに増えるんですね!
When gills parts of dried Shiitake were exposed to sunlight for 1 h or 3 h, the contents of vitamin D_2 increased about 24 times (average 488 IU_piece) or 27 times (average : 548 IU/piece) higher than those before radiation (average : 20 IU/piece).
”Effect of Solar Radiation on Vitamin D_2 contents in Shiitake Mushrooms(Lentinus edodes)”
「日光照射によるシイタケ中のビタミンD2増量効果」(神戸女子薬科大学)
ちなみに、干し椎茸の卸問屋、杉本商店さんによれば、干し椎茸は紫外線を浴びるほど白くなるのだそうです。
黄色っぽかった色が白く変わったら、ビタミンDがたっぷりできたサインと考えると良いでしょう。
6 自家製干し椎茸を作るなら
天日干しの自家製でも意味がある
こうしてみてくると、椎茸が余ったから天日干しにして干し椎茸にしても仕方がないと思う人もいるかもしれません。
でもそんなことはありません!
- グアニル酸は、60度での乾燥に比べれば少ないかもしれませんが、生成されないわけではありません。
- ビタミンDは太陽に当てれば生成されます。
- 干すことで長く保存ができるようになり、食品ロス削減につながるという社会的な意味もあります。
天日干し自家製干し椎茸作りのポイント
でも、「天日干しで干し椎茸を作ってみたら失敗した」という声もよく聞きます。
- 乾燥している日に干し始める
- 軸を切り離して干す
- 薄くスライスして干す
①乾燥している日に干し始める
干し野菜全般に言えることですが、干し初めの日にある程度乾くと、かびるなどの失敗の確率がかなり低くなります。
雨の日や曇りの日ではなく、湿度が低い晴天に干し始めましょう。
②軸を切り離して干す
硬くて食べられない石突を落としてから(これは捨てる)、軸も本体から切り離して干すのがおすすめです。
軸の付け根の部分は乾きにくく、ここからカビてしまうこともあります。
軸は捨てずに一緒に干すと良いでしょう。
薄切りにしておけば使いやすいです。
③薄くスライスして干す
高温乾燥したものに比べると、ふっくらした戻り方、旨味の点では天日干しは劣ってしまいます。
なら、いっそのこと割り切って、薄切りにして干すことをおすすめしています。
薄切りにすることで空気に触れる面が多くなり乾くのが早いため、黒くなるなどの失敗が起きにくくなります。
薄切りにしてあれば、料理につかいやすいというメリットもあります。
忙しい時は、例えば汁物なら戻すことなくそのまま入れて調理できます。
炒め物などに加える場合も、水に15分も浸けておけばしっかり戻ります。
車通りの激しい地域に住んでいるとか、家を開けがちという場合、外に干しておくのはどうなのかと考えてしまいますよね。
その場合は、窓際の日の当たる場所を選んで干せば大丈夫です。
ただしUVカットしてある窓だと、紫外線が入らないのでビタミンDは増えないことに注意してください。
まとめ
「天日干しの干し椎茸は旨味が少ない?」と題して書いてきましたが、今回の結論は、
- 旨味とビタミンDの両方が欲しいなら、60度の温度にあげて乾燥した干し椎茸を購入する。日光に1時間以上当ててから料理する。
- 食品乾燥機を使って60度程度の温度で乾燥させてから日光に当てる。
- 天日干しだけで乾燥させるなら、失敗しにくいスライス干し椎茸にするのがおすすめ。
干し椎茸の旨味と栄養を逃さず、美味しく食べてくださいね!
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