「ひじきって鉄が多いんじゃなかったの?」2015年の日本食品成分表の改訂は、驚きを持って迎えられました。
「本当のところ、鉄は多いの少ないの?」
2020年の改訂を経ての現状、成分表の数字の基礎、業界が持っている数字など、さまざまな資料から検討してみました。
目次
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サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。
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Re・rise News
1 2015年、ひじきの鉄含有量の大幅減少が話題に
ステンレス鍋と鉄鍋〜加工の違いによる鉄分の差?
2015年、日本食品標準成分表の改訂(七訂)にあたって、ひじきの鉄分量が大きく値を下げることになり、食に関心を持つ人たちの間ではショッキングな話題になりました。
「ステンレス釜製品と鉄釜製品の間に有意な差があった」(日本食品標準成分表に関するQ&A 2015)ことから、加工の際に鉄釜を使うのか、ステンレス釜を使うのかを分けて表示することになったのだそうです。
六訂では100gあたり55mgあった鉄分が、七訂では加工の主流であるステンレス釜で6.2mgと、9分の1になり、2020年の八訂でも低いままの数字が維持されています(以下は八訂の数字)。
では、鉄釜で加工したひじきを購入すれば良いのでしょうか?
もちろんその方が鉄分は多く含まれることになるわけですが、鉄釜で、それも煮て作られるひじきはごくごく珍しいのだそうです(後述)。
家で鉄鍋を使えば、鉄分は増えるのか?
なお、「家で鉄鍋を使えば、食品に鉄が吸着するのですか?」との疑問に対しては、つれない回答になっています。
製造工程では数時間から長いところだと10時間以上煮るそうなので、家で鉄鍋を使って料理してもそこまでは無理そうですね。
日本食品成分表2015年版(七訂)の「鉄釜」とは、ほしひじきの製造工程において、原藻を長時間煮る「製造用の釜」であり、ご家庭で調理に用いる「鍋」ではありません。通常の調理で鉄鍋を使用した場合については調査していません。
出典 : 日本食品標準成分表に関するQ&A 2015
2 日本食品成分表の数字の疑問
1 輸入物が8割以上なのに、なぜ国産の数字だけ?
国産ひじきは13〜14%のみ
*上の円グラフはの数字の出所は(注1)をご覧ください。
日本で流通しているひじきの8割以上は、実は輸入物です。
なのに、日本食品成分表の数字は国産のひじきだけを対象としたものなのです。
その理由は、以下のように説明されています。
(対象は)国産品です。分析を行った際、輸入品は製造に用いられた釜の材質等の情報が 入手できなかったため、製造方法が明確な国内産のほしひじきのみを試料としま した。
出典 : 日本食品標準成分表に関するQ&A 2015
日本食品成分表でのひじきの鉄分の数字は、流通量がたった13〜14%程度に過ぎない国産のものだけを取り上げているので、海外からの輸入物のひじきについてはどうなのかも確認してみたいところです。
2 鍋に触れない蒸煮法が95%以上
産地製法と釜の素材によるシェア
(「フードシステム研究」ヒジキの鉄と国内市場の実態について を元に作成)
「ほしひじき ステンレス釜」(09050~09052)の成分値の決定にあたっては、煮熟 (シャジュク)した製品と蒸煮した製品の両方を試料としましたが、分析結果に両者の間で明確な差はありませんでした。なお、「ほしひじき 鉄釜」(09053~09055)は、煮熟した製品を試料とした分析結果に基づいて成分値を決定しています。
出典 : 日本食品標準成分表に関するQ&A 2015
鍋の鉄分がひじきに入ったことで鉄含有量に変化が出たと言われますが、現在の加工法の95%以上は蒸煮法をとっており、鍋とひじきの接触はないと言います。
2015年にこのニュースを聞いてすぐに、伊勢ひじきを中心に扱う北村物産株式会社代表取締役の北村裕司さんに問い合わせたところ、「鉄釜自体あまり使われていないし、鉄釜との接触はないはずなのになぜなのか、、」とやはり不思議がっていらっしゃいました。
「煮熟 (シャジュク)した製品と蒸煮した製品の両方を試料としましたが、分析結果に両者の間で明確な差はありませんでした」ということなので、接触がなく蒸すだけでも違うということになるのでしょうか?
3 輸入ものは、ステンレス釜でも鉄分が多い
さらに不思議なことには、日本ひじき協議会のデータによると、韓国産、中国産はステンレス釜がほぼ100%なのに鉄分が多いというのです。
なぜこんなことが起こるのでしょうか。
(株)くらこんのHP「ひじきの主な産地」の中に、「国産は100%天然、韓国、中国はほとんどが養殖」という一文を見つけました。
これは個人としての私の感想でしかありませんが、養殖の環境や方法に秘密があるのかもしれません。
業界の研究を待ちたいところです。
4 メディアなどでは、乾燥状態の値だけを取り上げている
改めて2020年版の日本食品成分表(八訂)をみてみると以下のような数値になり、2015年に低下したひじきひじきの鉄分の数値は低いままになっています(再掲)。
ただ、不思議なのは、茹でと油いための数字も載っているのに、メディアなどで取り上げられるのは乾燥状態の数字のみです。
でも、実際には、ひじきを乾燥したまま食べる人はいないでしょう。
そこで、実際のところ、ひじきの鉄分は多いと言えるのかを改めて数字で探ってみたいと思います。
茹でて食べられる状態になったひじきの鉄分は?
日本食品成分表では、乾燥のひじきを茹でると鉄分が約5%になっていることから、日本ひじき協会の上記データに照らして考えると、
韓国産 2.38mg
中国産 2.39mg
(いずれも100g中)
の鉄分が含まれると考えられます。
食品表示基準(平成27年内閣府令第10号) 別表第十二(第七条関係)によれば、2.04mg以上の場合、高い旨の表示ができることになります。
なので、韓国産、中国産のひじきは鉄分が高い食品といえることになりそうです。
3 鉄の吸収をアップするために
ひじきに含まれる鉄は、植物性の非ヘム鉄で、その吸収率は2~5%。
動物性のヘム鉄が10~20%吸収されるのに比べると、吸収率がかなり低いのです。
吸収率をアップさせるためには、ビタミンCを多く含む食品とともに食べると良いとされます。
また、紅茶、コーヒー、緑茶などに含まれるタンニンは、鉄分の吸収を妨げる働きをするので、一緒に摂らないように注意すると良いでしょう。
まとめ
こうして数字を見てくると、ひじきで鉄分をとりたいと考えるなら、残念ながら国産ではなく、鉄分が多い韓国産、中国産を選ぶべきということになります。
何についても、これさえ食べればOKというわけではありません。
日本の食文化の中で長い歴史をもつひじき、美味しく食べていきたいですね。
(注1)
現段階での最新データ2019年の財務省貿易統計(輸入)を見ると、ひじきの輸入量は、韓国産 1921トン、中国産 2270トンとなっています。
農水省企画部会議事録「わかめ ひじき」によると、「ひじきについては国内生産に関する統計データ無し」とのことで、ひじきの扱いがある(株)くらこんのHP「ひじきの主な産地」にある推定値700トンを採用して計算しました。
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