「好きなものを好きな​ときに好きなだけ食べても大丈夫」〜日清の挑戦

唐揚げとビール

「好きなものを好きな​ときに好きなだけ食べても大丈夫な世界をつくりたい」

日清食品の代表取締役社長 安藤徳隆氏は、そう語ります。

日清が目指す社会はどんなものなのでしょうか?

日経クロストレンド FORUM/CHATBOT SUMMIT TOKYO 2021で、安藤氏のお話を伺いました。

ほぼ同じ内容の音声配信はこちらでお聴きいただけます。

standFM 「サカイ優佳子の 食卓で世界旅行

サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。

2011年からは特に、現代のライフスタイルに合わせた乾物の活用法の研究、発信に力を入れています。

日々の食卓を手軽に美味しく楽しみながら、キッチンから世界をみる眼を持ち続けたいと思います。

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1 メニューも味も変わらないのに、体重減?

ウエストサイズを測る女性

安藤氏は、最新の分子栄養学に基づいた完全栄養食を開発し、好きなものを好きな​ときに好きなだけ食べても大丈夫な世界を実現したいといいます。

自身が中年になり、食べすぎや飲み過ぎを気をつけなければならなくなって食の楽しみが減ったことから、そうしたニーズはあるに違いないと考えるようになったといいます。

開発した「完全栄養食」を社員食堂で提供したところ、3週間で

  • 男性の30%が体重減
  • 70%以上の人の血圧が改善
  • 体脂肪率30%以上の人たちでは100%が体脂肪率減少

などの効果が見られたといいます。

肥満から始まる、いわゆる「メタボリックドミノ」に至らないために、その前の肥満やインスリン抵抗性を引き起こさないようにする「未病対策」として考えているのだそうです。

参考 : NHKテキストビュー「メタボリックドミノとは

2 美味しい完全栄養食への壁

カップ麺

カップ麺を作る技術が活かされる

今までの完全栄養食は、例えば一食をドリンクやエナジーバーのようなものに置き換えるといったイメージでしたが、日清食品が目指すのは、カップ麺、インスタントラーメンを開発する中で培った様々な技術を活かして

  • カツやカレーなど、メニューはいつもとかわらない
  • 言われなければ違いがわからないほどの味や食感を実現

する完全栄養食です。

ただ、それを実現するためには、以下のような課題があると言います。

  • 減塩
  • 油を減らす
  • カロリーを減らす
  • 苦味やえぐみを出さない
  • 調理時の栄養流出をなくす

カップ麺やインスタントラーメンを作る中で培ってきた技術を使って、こうした課題を一つ一つ解決し、社員食堂でのメニューはすでに300を超えているといいます。

減塩のための技術

減塩には、NaCl(塩化ナトリウム)をKCl(塩化カリウム)に置き換えるのが一般的ですが、KClは苦味やえぐみが強いのが難点でした。

世界から170種類塩を取り寄せて研究を重ね、苦味やえぐみは出さずに30%の減塩を実現したのが「ソルトオフ製法」で、完全栄養食にもこの技術を使っています。

油を減らすための技術

ロースかつ

ミストエアードライ製法を使えば、カツを美味しいままにカロリーオフが可能?

カップヌードルライトを開発する際に使った技術は、ミストエアードライ製法と呼ばれるものなのだそうです。

カップ麺は、麺を油で揚げることで美味しく感じられるのですが、熱風乾燥した後に最低限の油をミストのようにして食材に吹きかけることで大幅な油の削減ができるといいます。

例えばカツなどの揚げ物を作る際に、この技術が採用されています。

和食のシェフとのコラボ

そしてもちろん、美味しくなければ続きません。

半年から1年後(2021年暮れから2022年夏ごろ?)の商品化に向けて、おいしさを担保するために、予約が取れない店で有名な東京都港区の「くろぎ」のシェフが、味の監修を担当しています。
(尊敬する西健一郎さんのお弟子さんと知り、伺ってみたいけれど昼は3万から、夜は時価!!)

3 完全食1.0から完全食2.0へ

ウェアラブル

先ほども書いたように、商品化までにはまだしばらく時間はかかるとするものの、4〜5年先(2025〜2026年)に向けての構想も安藤氏は話していました。

  1. 健康診断で問題があった人に対する定期宅配
  2. 社員食堂
  3. シニア向けの健康寿命延伸サポートプログラム
  4. コンビニやスーパーでの小売(インスタント食品も完全栄養食に)
  5. スマートシティ構想

1から4は、とくに説明はいらないと思います。

5については、ウェアラブルデバイスやアプリを使い、AIの力を借りて、以下のようなコミュニティを作ることを目指したいというのです。

  • 完全栄養食を提供する飲食店がある
  • スーパーなどで完全栄養食のミールキットやお惣菜が手に入る
  • 社員食堂で完全栄養食が提供される
  • 病院でも完全栄養食が提供される
  • フィットネスジムでの運動記録とも連動

そして、最終的には、個々人のパーソナルデータに基づいて、個人に最適化されたメニューを提案できる社会を作り、予防医学を実現する国を目指したいという壮大な構想でした。

4 感想

確かに、栄養のことを何も考えずに食べても健康な体になれるとしたら、歓迎する人は多いかもしれません。

ただ、一方で、社会全体で給食を食べるような感覚をも覚えてしまいました。

また、こうした社会になることで、一般の人が食について考える機会はさらに少なくなり、「完全栄養食」がなければ栄養バランスを考えた食事を作ることができない状況にならないとは言えません。

「完全栄養食さえ食べていれば大丈夫!」なのではなく、健康診断の数字が悪くなった時に、あるいは体調を調えたい時になど、一時的な利用を想定するなら問題なのかもしれませんが。

むしろ、日清食品さんが培っていた技術を家庭で使うことができる機械が安価に開発できるのであれば、調理家電として魅力的かもしれません。

FOOD TECH市場は、注目を集めています。

環境負荷の削減や人の手を省く方向へ、そして健康的で幸せな暮らしへ。

食べものは、私たちの体や心を育んでいきます。

どんな未来であって欲しいのか?

何があったら嬉しいのか?

なには必要ないのか?

流されるのではなくて、自分ごととして考えていかなければいけないなと改めて思いました。

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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