2017年からほぼ毎月1回、読書会をファシリテートしています。
2018年5月からは、テーマを食に絞って開催するようになりました。
2021年からオンラインでの開催に切り替え、毎月食の本を読むシェアReadingの会を開催しています。
取り上げた本はブクログ本棚でご覧いただけます。
そんなわけで、個人的にも、常に食に関する本をあれこれ読んでいます。
今回ご紹介する本「日本外食全史」(阿古真理 2021年 亜紀書房)も、その一つです。
サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。
2011年からは特に、現代のライフスタイルに合わせた乾物の活用法の研究、発信に力を入れています。
日々の食卓を手軽に美味しく楽しみながら、キッチンから世界をみる眼を持ち続けたいと思います。
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「サカイ優佳子の 楽しく 美味しく 未来を創る」
1 日本の外食の歴史を概観する内容
阿古さんといえば、昭和の家庭の食卓のあり方の著書が多いという印象を持っていたのですが、ここでは江戸から始まる日本の外食についてを、膨大な資料とウェブ情報にあたって一冊の本にまとめあげています。
ジャンルを問わず、庶民的なラーメンやカレー、闇市から高級料理店までを取り上げているため、そのボリュームは635ページ(索引除く)に上る大著です。
ちなみに、「主要参考文献」だけでも17ページあります。
力作!です。
庶民による外食時代の幕開けは1970年
1970年の大阪万博が外食元年と、阿古さんは位置付けています。
私は、1962年生まれ。阿古さんの5つ上ですが、ほぼ同じ世代です。
私が子どもの頃、週に1度は外食という決まりの我が家は、当時周りには珍しがられていました。
東京駅まで快速で45分かかる千葉に住んでいたのに、食べるのが大好きだった父に連れられて、都内に美味しそうな店ができたといえば、インドネシア料理店や串揚げ店、浅草の煮込みの店などにお供する子ども時代を過ごしていました。
この頃が外食時代の幕開け、1970年代に当たります。
当たり前に庶民が外食を楽しめる時代になるまでの50年を、ほぼ同時代で経験してきた世代というわけです。
2 外食の歴史を作った人たちの生き様
最近のドラマはもちろん、日本ミシュランのスタートなどのほか、私にとってはバブル時代を思い出させる懐かしい「Hanako」の話題など、日本人総グルメ化に果たしたメディアの役割の大きさが、まずは描かれています。
そして、外食50年の歴史をざっと概観した後、和食と、洋食、西洋料理(フランス、イタリア)、中国料理とアジア飯など、分野ごとに盛りだくさんな内容になっています。
特にその分野での発展の歴史に寄与したと思われる料理人たちについては、その来歴に触れています。
10代で修行を始めていたり、戦地での壮絶な経験があったり、海外で武者修行したり、と、苦労している人が多いのも印象的で、読ませます。
当たり前のことですが、飲食店を作るのは、人なんだということを改めて感じさせられます。
3 外食はどこへ行く?
さまざまな外食が楽しめる日本、これからどんな方向に進むのでしょうか。
「エピローグ コロナの時代の後に」では、飲食店の苦境に触れつつも、新しい動きがすでに始まっていることも描いています。
例えば、地元で愛されながらも消えそうな飲食店の「絶メシ」を東京で紹介する「烏森絶メシ食堂」、元SEが開いた食品ロスを出さず、働けば一食食べられるシステムがユニークな「未来食堂」、1日100食限定として、あえて売り上げをあげすぎずに暮らしを守りながら食堂を運営する国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」などを最後に取り上げています。
一番手っ取り早く起業できる一方で、廃業もまた多いと言われる飲食店経営。
いろいろな意味での「持続可能」な飲食店のあり方をどう考えるのか。
どこで何を食べるかを選ぶ私たちにも問いかけられている、そんな読後感をもった本でした。
そして、1960年代生まれにとっては、出てくるレストランの名前や、「料理天国」などのテレビ番組の名前が本当に懐かしく(料理天国は毎回欠かさず見ていました)、自分の若かりし頃を思い出しながらこの大作を思わず読んでしまったことを付け加えさせていただきます。
食の本に関する情報だけが届きます。

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