<食の未来>細胞農業が開く未来?①〜工業型畜産は限界を迎えている〜

CLEAN MEAT 培養肉が世界を変える

食の未来を考えるきっかけ、より多くの人との対話のきっかけになればと思い、書いています。

「 CLEAN MEAT」の衝撃


ある方に「この本をご覧になってください。私には衝撃でした。」とお薦めいただき、読みました。

私も、衝撃を受けました。

2020年初めに日本で出版されたこの本の原著は2018年にアメリカで出されています。

原題は
CLEAN MEAT How Growing Meat Without Animals Will Revolutionize Dinner and the World

ちなみに、序文は、あのユヴァル・ノア・ハラリが書いています。

培養肉に関するニュースにはそれなりに触れてきましたが、この本は、培養肉を作り出そうとする人たちが、どんな想いに突き動かされて動いているのかが、生き生きと描き出され、非常に興味深く読みました。

この本がなんども指摘するのは、原題の工業的畜産の限界と、その先の世界についてです。

クリーンミート 培養肉が世界を変える

 

現在の工業的畜産はすでに限界?


肉食は食料供給法として効率が悪い

肉を作ろうとすれば大量の飼料が必要で、例えばアメリカでは牛一頭を育てるために、1日9kgもの飼料が必要というデータがあります。

2050年には人口が90億人に達すると言われる地球。

人は豊かになるにつれ、穀物中心の食事から肉食へと変わってきます。

今のままの食生活で、世界の人が皆食べていくことができるのかは疑問視されています。

人が食べている穀物の総量より、家畜が食べている方が多いのです。

工業的畜産が環境破壊に繋がる

動物たちが飲む水だけではなく、その飼料を作るために使われる水も含めると、畜産は、実は世界最大量の真水を必要とする業界と言われています。
2019年にニュースになったブラジルの熱帯雨林の森林火災の多くが、牧場地として土地を売るために更地にしようと放火したからと言われ、牛肉を育てることが、熱帯雨林消失にも繋がっています。
(フィンランドはこれを理由にブラジルの牛肉輸入を禁止しています)
さらに、国連食糧農業機関(FAO)の2013年報告によると、世界の温室効果ガスの総排出量のうち、実は畜産業だけで14%にも上るといいます。

また、日々大量にでる糞尿からくる水や土地の汚染問題も軽視できません。

人間の健康を損なう

経済効率のために狭い場所にたくさんの家畜を飼うことから、予防的に抗生物質を使うことで、畜産の現場では人に使うよりもずっと多く抗生物質が使われています。

これによって、抗生物質耐性菌が生まれやすくなっていることも危険視されています。

動物虐待

アニマル・ウェルフェアという言葉は、2020オリンピックで出される食事に関して取り上げられていたので、耳にしたことがある方も増えていると思います。

最終的に食用にするにしても、生きている間はできる限り家畜のストレスを少なくする育て方をしようというもの。

 

私たちの食用に改良された動物たち。

著者によれば、アメリカでは年に3500万頭の牛が、90億羽の鶏が食用にされていると言います。

知ってはいても、やめられない肉食

さまざまな意味で限界を迎えている工業的畜産。

とはいえ、私もその一人ですが、肉食をやめよう、ベジタリアンになろうと言われてもできないんです。

北米を旅するときには、連日ドカンドカンと皿に盛られる大量の肉に嫌気がさして、ベジバーガーをオーダーすることもありますが、基本的には肉なし生活はほぼ考えられないのが現状。

そこで、「細胞農業」という世界を作り出そうとしている人たちがいます。

次回は、細胞農業にはどんなメリットが? についてわかりやすくかけたらいいなと思っています。<続く>

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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