フィリピン料理を食べたこと、ありますか?
マニラに4時間半ほどのフライトで着けるくらいに近いのに、フィリピン料理について知ってる日本人って、意外に少ないなあとずっと思ってきました。
20代で勤めていた会社が、フィリピンの会社と一緒に仕事をしていた時期があり、同じオフィスで多くのフィリピン人と机を並べていました。
私にとっての初めてのフィリピン料理は、そんな中の一人、Reyという男性が作って持ってきてくれたアドボでした。
サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。
2011年からは特に、現代のライフスタイルに合わせた乾物の活用法の研究、発信に力を入れています。
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目次
1 世界の料理オンラインレッスンでご紹介した料理
先日開催した世界の料理オンラインレッスンのテーマは、フィリピン料理でした。
私にとっては、いろいろ思い出もある料理の中から、3つを選び、日本の家庭でも作りやすい形にアレンジしてご紹介しました。
フィリピンの家庭料理の定番、アドボ
その一つが、アドボです。
Reyが作ってきてくれた時のことは、今でもよく覚えています。
タッパーの中に、いかにも美味しそうな照りのある鶏手羽元が5本ほど入っていました。
「Yukakoのために作ってきたんだ」と勧めてくれました。
にんにく、ベイリーフ、ブラックペッパーの風味が効いて、酢醤油味がなんともご飯が欲しくなる味でした。
Reyや他のフィリピン人同僚たちによれば、「豚肉と鶏手羽元のミックスが一番人気」とのことでした。
アドボ(adobo)とは、マリネするという意味なのだそうです。
肉を酢醤油ベースのマリネ液に浸して一晩おいてから、液ごと肉が柔らかくなるまで煮込むだけの簡単料理です。
私はさらに手軽に、一口大のもも肉でマリネ時間も大幅に短くしたレシピとしてご紹介させていただきました。
お酢がたっぷり入るので、暑い時期のお弁当のおかずにもぴったりです。
フィリピンでは、魚介類のアドボ、例えばイカのアドボなども食べるそうです。
現地では薄く白濁したココナッツビネガーを使うと聞き、取り寄せて試してみたこともありましたが、日本のお酢でも十分美味しくできるので、私は普通に米酢を使っています。
フィリピン版セビーチェ?お刺身サラダ、キニラウ
「熱帯でお刺身?」と思う方もいるかもしれませんが、これもフィリピンではポピュラーな料理です。
お刺身を酢と、カラマンシという柑橘でしめています。
ピーマンや玉ねぎ(現地では紫色のエシャロットを使います)、唐辛子、トマトなどと混ぜて作ります。
ピリ辛でさっぱりした味は、白ワインやスパークリングにピッタリ。
そして、ご飯とも合うんです。
ココナッツミルク煮 ライン
ルソン島の南部ビゴール地方の郷土料理ですが、レトルトがあるほどの人気料理です。
私が初めてLaingを作ってみたのは、2010年ごろ。
錦糸町の駅前にあったエスニック食材を扱う店で、みたことがない乾燥した葉っぱを発見しました。
いったいどんな料理に使うのだろう?と調べてみた時に、これがラインという料理の原料だと知りました。
タロイモの葉は、里芋の葉と似てアクが強く、アク抜きをしないと料理がとんでもないことになります。
湯がいてから水にさらすという作業が必要です。
でも、そうして作ってみたラインはとっても美味しく、我が家の定番の一つになりました。
たっぷり入れたタロイモの葉がクタクタになるまで煮込みます。
とはいえ、タロイモの葉はそう簡単には手に入らないし(一時は大量購入してストックしていました)、料理教室で教えるにはハードルが高すぎます。
そこで、生の小松菜を使って、「ライン風」の料理としてお伝えすることにしました。
そして肉も、塊肉ではなく、細切れを使うことで調理時間を短くして、小松菜もクタクタにはならないくらいの煮込み方にしてみました。
あっさりさっぱり風のアレンジです。
ラインには欠かせないえびの風味は、干しエビを使って出すことにしました。
フィリピンにはバゴーンと呼ばれるエビの発酵調味料があり、実際はそちらを使うようです。
バゴーンをたっぷり入れて作るチャーハンは、マニラで食べて以来、実は息子の大好物となり、バゴーンは我が家の常備調味料の一つです。
タイのガピと近い風味です。
2 フィリピン料理の特徴
私が感じたフィリピン料理の特徴
- 酸味を利用する
- 他のアジア諸国の料理に比べると、塊肉を使った料理が多い
- ココナッツミルクとエビの風味を使うことが多い
酸味を利用する
フィリピンには、激辛料理は伝統的には少ないようで、酸味を利用することが特徴と感じています。
アドボもそうですし、キニラウも、酸味を効かせることによって、高温多湿の中での食欲と、料理の保存性とを高めているのでしょう。
肉をドッカンと食べる
また、スペインやアメリカ領だった時代が長いからか、他のアジアの国に比べると、塊肉をドッカンと食べるという印象もあります。
例えば、セブ島名物レチョンはスペイン由来。
本来は子豚の丸焼きですが、多くは皮付きの豚肉で作ります。
1999年、フランスの田舎町に住んでいたときに知り合ったフィリピン人女性が、レチョンをご馳走してくれたことがあります。
パティス(フィリピンではナムプラーをこう呼びます)やバゴーンの匂いに、同じマンションの住人から苦情がきて料理しにくくて困ると嘆いていました。
彼女は、レチョンをパティスとニンニクで調味していたのですが、本場スペインではパティスは使わないはずなので、スペインから伝わった料理がフィリピン化したということになるのでしょうね。
ココナッツミルクやエビの風味を好む
あとは、東南アジア全般に言えることですが、ココナッツミルクを使った料理が多いことも特徴の一つです。
この写真は、ギナタアン・カラバサという料理です。
カラバサはかぼちゃ、ギナタアンはココナッツミルクを意味します。
これもエビの風味を効かせて作ります。
まとめ
今回ご紹介できなかった中にも、もちろん美味しいフィリピン料理はたくさんあります。
私もまだ作ったことがない料理に、例えばカレカレという伝統料理があります。
フィリピン女性たちからは、「あれは作るのが難しいからミックスで済ませちゃう」とよく聞きます。
牛テールなどを、濃厚なピーナッツソースで煮込んだシチューのような料理。
バナナの花の蕾やインゲンがたくさん入っていた印象が強いです。
また、シニガンという酸味の強いスープ(タマリンドという豆科の植物を使います)も、今回ご紹介しようと思っていたのですが、娘曰く、「前に作ったんだけど、日本人の7割は受け付けなかったよ」ということなのでやめにしておきました。
娘の親友のお母様がフィリピン人なので、何度かご馳走になるうちに娘も作るようになったのだそうです。
なので、娘の味付けが悪かったというわけではなさそうなんですけれどね。
洗練された料理というよりは、毎日のおかずとして食べたいものが多いフィリピン料理。
これからも、いろいろ作って、世界の料理オンラインレッスンでご紹介していきたいと思います。
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