今回ご紹介するのは、油麩(あぶらふ)。
宮城県の北部、仙台市や登米、また岩手県の南部にご縁がある方には、お馴染みの食材かもしれません。
2018年くらいからでしょうか、私が暮らす横浜近辺のスーパーでも取り扱うところが増えてきました。
油麩といえば、卵とじや、それを丼仕立てにした油麩丼が有名です。
とはいえ、まだまだ使ったことがないという方も多いようです。
油麩とは何か?油麩の製法や栄養、保存方法、美味しい食べ方などをご紹介します。
目次
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1 油麩とは?

一本の油麩を半分に切ったところ
油麩は揚げ麩
油麩とは、揚げて作られるお麩です。
「仙台麩」という名前で呼ばれることもありますが、これは、株式会社山形屋商店さんが登録している商標です。
一般の乾燥麩は、焼き麩です。
揚げたお麩は、油麩の他にも夏限定でメーカーさんの販売所で売られているのをみたことはありますが、珍しいです。
油麩の作り方
お麩の原料は、小麦です。
小麦粉の中でも、グルテン(小麦タンパク)含有量が多いものを使います。
小麦粉を水洗いすることで炭水化物を流し、タンパク質であるグルテンを取り出します。
取り出したグルテンは、粘り気があり、伸びる性質を持っています。

グルテンを多く含む強力粉を洗って、炭水化物を流し、取り出した小麦グルテン
ここまでは、他の麩の製法と同じです。
これを棒状に整形して、油で揚げてから乾燥させたのが油麩です。
宮城県登米市が作った油麩の動画を見つけました。
- グルテンを取り出す
- 切り出す
- 切り込みを入れながら揚げる
というプロセスを動画で見ることができますよ。
バゲット(フランスパンの一種)を短かくしたような見かけです。
市販されている油麩
油麩は、1本のまま売られていることもありますが、1cm程度の厚さにスライスしたものも売られています。
薄切りにして使うつもりであれば、自分で包丁で切るよりもきれいに切れるので、スライスされているものが便利です。
ただ、崩れやすく、また価格が割高になるので注意してください。
2 油麩の特徴

知らないと、まるでバゲットのように見える油麩
油麩にはこんな特徴があります。
- 揚げてあることで、他のお麩に比べてコクがある
- 外はパリッ、中はふわっ
- 揚げてある分、カロリーが高い
- 油が酸化しやすいので、賞味期限が短い
では、順番に説明しますね。
①揚げてあることで、他のお麩に比べるとコクがある
揚げてあることで、肉の代わりに使ってもコクがあり、満足感があります。
油麩を使った酢の物も人気ですが、他のお麩で代用しようとすると、味がぼやける傾向があります。
やはり、揚げてあるからこその美味しさなんですね。
②外はパリッ、中はふわっ
焼き麩はそのまま食べるとパサパサしますが、油麩は周りがパリッとして、中はふわっとした食感です。
この外と中の食感の違いは、油麩ならではの魅力です。
③揚げてある分カロリーが高い
日本食品標準成分表によれば、焼き麩の一種、板麩は100gあたり379kcal、車麩は387kcal。
油麩の数字はありませんが、焼き麩と植物油のカロリーから算出すると589kcalとの参考値があります。
*(株)EatSmartが運営するサイト、EatSmart「カロリー・チェック」の車麩の項目
一般に乾物はカロリーが低いと考えられていますが、油麩についてはカロリーへの注意が必要です。
④油が酸化しやすいので、賞味期限が短い
焼き麩の賞味期限は1年を超えるものが多いのですが、油麩は3ヶ月から半年くらい。
比較的短いのは、油を使っているから。
油の酸化を考えると、致し方ないことと思います。
特に開封してからは酸化が進みやすいので、できるだけ空気に触れないように密封してください。
冷蔵庫に保管するなどして、早めに使い切りましょう。
3 油麩の美味しい食べ方
戻して使う
油麩の戻し方
- 使いたい大きさに切る、あるいは割る
- 水に5分ほど浸ける
- 水気をぎゅっと絞る
- 油が気になる場合は、切る前に熱湯をかけて油ぬきしてから戻すと良い
油麩は、そのままだと大きいこと、また外側に油がついていることから水を弾きやすいので、使いたい大きさに切ったり、割ったりしてから水に浸けて戻します。
1cm程度の薄切りだと5分ほどですっかり戻りますが、大きくなるほど時間がかかります。
また、端の茶色い部分は油を含んでいるため、白い部分に比べて水分を吸いにくいので、戻しに時間がかかります。
戻ったら、ぎゅっと水気を絞って使います。
油で揚げてあるため、常温の水で戻したものを触ると、手が油でベタベタします。
カロリーを抑えたい場合や、料理に油をあまり加えたくない時は、熱湯で油を流して(油抜き)戻すと良いでしょう。
油麩の調理例①油麩丼

油麩の卵とじ。三つ葉をトッピング。これをご飯に乗せれば油麩丼に。
宮城県登米(とめ)市の郷土料理「油麩丼」は、鶏肉の代わりに油麩を使って、親子丼のように調味して作ります。
レシピは「乾物マジックレシピ」所収
乾物マジックマスター講座に参加してくれた方々からは、こんなご感想が上がっています。




油麩の調理例②酢の物

この酢の物は油麩だからこそ成り立つと思います。焼き麩では、この美味しさは出ません。
戻した油麩を酢の物に入れると、コクが出てとても美味しくなります。
レシピは「乾物マジックレシピ」所収
私が初めて油麩を口にしたのが、実は、油麩の酢の物でした。
試食販売しているところに出会ったのです。
「お麩で酢の物?」と初めは思ったのですが、その美味しさに驚いてその場で油麩を買って帰りました。
2012年くらいのことだったと思います。
それから、油麩は我が家の食卓によく登場するようになりました。
酢の物、ぜひ試してみてくださいね。
油麩の酢の物を一度食べてしまうと、他のお麩だと、コクが足りないなと思うのです。


油麩の調理例③すき焼きや肉じゃがに
すき焼きや肉じゃがなど、濃い味の煮物に具として加えると、ダシを吸ってとても美味しくなります。
油麩の調理例④卵液で戻して

油麩を卵液で直接戻してピカタやフレンチトーストに
薄切りにした油麩は、白い部分がよく水分を吸うので、卵と牛乳を合わせたものに直接つけるだけでも10〜15分ほどおけば戻ります。
これを甘い味付けでフレンチトースト風に、またチーズを加えて焼いてピカタ風にするのも手軽でおすすめです。
レシピは「乾物マジックレシピ」所収


油麩の調理例⑤甘い紅茶で戻してスイーツに

車麩を甘い紅茶で戻してアイスクリームとジャムをトッピングしてスイーツに
甘い紅茶で戻してアイスクリームやヨーグルトと合わせてスイーツ風に。
実は、これ、昭和の人には懐かしい「サバラン」というお菓子をイメージして考案しました。
レシピは「乾物マジックレシピ」所収
サバランは、洋酒をしみ込ませたブリオッシュにクリームやフルーツを合わせた大人向けのケーキです。

昭和生まれの人には懐かしい?サバラン
以前、この料理を試食してくれたパン教室の先生が、「サバランはもう油麩で作ります。ブリオッシュを焼く必要を感じなくなりました!」とおっしゃっていましたよ〜!
戻さずに使う
味噌汁などの汁ものの浮き実に
登米地方の家庭料理「はっと汁」は、肉や野菜、きのこなどがたっぷり入った汁物の中に、小麦粉と水を練って作った「はっと」をいれて作る、すいとんに似た料理です。
この汁にも、油麩を入れる人が多いと言います。
JAみやぎ登米のページに、はっと汁の作り方を見つけました。
ここでも最後に油麩を入れています。
これに習って、お味噌汁やけんちん汁などに油麩をいれてみてはどうでしょうか。

油麩をトッピングしたお味噌汁(チームDRYandPEACE 成田奈苗講師の写真)
汁にひたると戻るので、食卓に出す直前にトッピングして、汁の上に浮いた部分のカリッとした食感と、汁につかって戻ってふわふわした食感とを楽しむのがおすすめです。
クルトンのようにスープやサラダに

油麩をクルトンがわりにサラダにトッピング
丸のままの油麩を、適当な大きさに砕いて、クルトンのようにスープやサラダに加えても美味しいですよ。
バゲットのように使う

オニオングラタンスープに油麩をのせて。
オニオングラタンスープにのせて焼くと、何も違和感なくバゲットだと思って召し上がる方が多いです。
バゲットは一本買ってもすぐにパサパサして劣化してしまいますが、油麩なら保存が可能。
使いたい分だけ少しずつ使うことができるのは、乾物全般に共通するメリットです。
カナッペ、ブルスケッタのように、具をのせてオープンサンドの軽食として使うのもおすすめです。

ベトナム風サラダを油麩にのせて
油條(ヨウティアオ)のように使う

油条はお粥に入れて食べるのが定番
油條(油条)は、中国や台湾などで食べられている揚げパンです。
お粥や、台湾で人気の朝食「鹹豆漿(シェンドウジャン*)」 などに添えて、その水分に浸しながら食べます。
**鹹豆漿は、塩味の豆乳スープで、干しエビ、ザーサイ、ネギなどが入ります。
油條の代わりに、油麩はぴったりです。
油麩と油條の違い
原料はともに小麦粉ですが、製法からくる栄養の違いがあります。
油麩 : タンパク質が主な栄養、炭水化物を洗い流してから揚げる「揚げ麩」
油条 : 炭水化物が主な栄養、発酵させてから揚げる「揚げパン」
4 まとめ:お麩の中でも汎用性が高いのが油麩
2018年に山と溪谷社から出した「乾物マジックレシピ」では、普段から食卓で使い回しやすい乾物を11種選び、それをどう使い回していくかを提案しています。
11の一つ、お麩の代表選手として取り上げたのが油麩でした。
油麩は、コクがあるので肉なしの料理でも満足感が高く、また焼き麩とは違って、戻さなくても普通に美味しく食べることができるという点で、他のお麩より汎用性があります。
そのまま食べることができるので、もしもの時の備蓄としても役にたちます。
油麩、ぜひ使ってみてくださいね!
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