【食育】ウチの定番カントニーズ・シュリンプを食べながらエビの養殖について考えた

カントニーズシュリンプ

我が家の定番、カントニーズ・シュリンプ。

アメリカに25年以上住んでいた義母が、中国からきていた方に作り方を教わったというもの。

家族みんなが大好きで、娘も作り続けています。

そんなえび料理を食べながら、持続可能なえびの養殖のあり方について考えました。

(2025年4月3日 加筆修正)

カントニーズ・シュリンプの作り方

カントニーズ・シュリンプの作り方は、とても簡単。

ご飯が進むおかずです。

材料

A{長ネギ みじん切り 5cm分、にんにく みじん切り 1片分、しょうが みじん切り 小さじ2}、豚ひき肉 100g、えび(からをむいて)200g、酒 大さじ1、鶏がらスープ 200ml、醤油  大さじ2、塩 少々、水溶き米粉(米粉 大さじ1、水 大さじ2)、卵 2個、油 適量、万能ねぎ、香菜などの青み少々

作り方

  1. 油をひいたフライパンでAを弱火で炒めて香りをたてる。
  2. えびに酒をふりかけておく。
  3. 豚ひき肉を加え中火で炒め、肉の色がかわったらエビを加え炒め合わせる。
  4. えびの色がかわったら鶏がらスープを注ぎ、蓋をして7~8分煮る。
  5. 醤油で調味し、塩味が足りなければ塩を加える。
  6. 水溶き米粉をくわえてとろみがついてきたら、溶き卵を流し入れ、半熟になるまで火を通す。
  7. 刻んだ青みを飾る。

 

エビと環境汚染

「エビと日本人」という1988年に書かれた名著、読んだことはありますか?

日本人が食べているエビがどこでどんな風に育てられているのか、それが現地にどんな影響を及ぼしているのかが書かれています。

海の一部を養殖場として、少しでも多くのエビを育てたいがために、密な状態でエビを育てます。

病気にかかりやすくなるので、抗生物質を大量投与。

こうした薬剤や、一箇所に多くのエビを育てることによる排泄物の堆積などによって、その一画が使えなくなると、新たにマングローブを切り開いて養殖場とする繰り返し。

私たち日本人は、エビを食べることを通じて、インドネシアのマングローブの減少や海の汚染と繋がっています。

バナメイエビの陸上養殖について

私が住んでいる横浜では、ここ10年くらいでしょうか、バナメイエビをスーパーで見かけるようになったのは。

まだバナメイが広まっていない頃、新潟県妙高市の陸上養殖の施設を取材させていただいたことがあります。

バナメイが陸上養殖に向いているわけ

なぜバナメイ?と思ったのですが、その理由はバナメイエビの習性にあり、だったんです。

多くのエビは、海底に生息するのだそうですが、バナメイは浮いているんです。

つまり、同じ面積の工場であれば、水深を深くすることで、より多くのエビを育てることができるわけです。

この会社、その後どうなっているのかな?とHPをみてみました。

安全な国産の養殖エビを提供したいと、今はその養殖技術を国内外に広める仕事もしていました。

千葉のホテル三日月が、サステナブルリゾート化計画の第一弾として、敷地内でエビの養殖を2024年にスタートしたという記事をみつけました。

こちらでご覧いただけます。

クルマエビとバネメイエビを、化学薬品を使わずに循環型の生簀で育てているとのこと。

この技術サポートをしている会社のことが、youtubeでも紹介されています

 

陸上養殖のメリット

そして、そのえび、一般の方も購入できるサイトを見つけました。そこには、陸上養殖のメリットが以下のように紹介されています。

  • 休耕地、耕作放棄地が国民の厚生のために活用されることとなる(国内食料自給率の向上)
  • 減少の一途をたどる漁業生産量に新たな生産手段をもたらすこととなる。
  • 沖合や海岸で行う養殖に比べ、担い手の身体上の負荷や危険は少なく、高齢者や女性、障がい者でもハウス栽培のイメージで就労に就くことができる。
  • 天候など、外界の環境には影響を受けにくい状態で養殖を行うので、露地での養殖に比べ、天候に左右されにくく、通年での出荷も可能となる。
  • 沖合/沿岸養殖では、投じた給餌残渣や水質改善剤が海につながっているので、どこまでも拡散されていき、環境破壊が問題視されている。一方、陸上養殖は外界との環境を遮断し、閉鎖式循環方式で行うことにより環境負荷を限りなくゼロに近づけることができる。
  • 陸上養殖で生じた給餌残渣や魚の糞などのタンパク質を農業の堆肥に活用することができる。
  • 陸地に養殖場があるので、収穫、出荷がスムーズで、出荷量、時期を需要に合わせ、調整することができる。

 

陸上養殖のデメリット

さて、ではデメリットはどうでしょう?

やはり一番は、電気などのエネルギーを消費するということになるのでしょうか。

認証養殖場が増えている

ASC認証

Seafood Legacy Times(2024/12/12)によれば、2022年に、養殖水産物が世界の水産物生産量の約57%を占め、初めて天然水産物を上回ったのだそうです。

  • ASC認証を取得している養殖場は52か国、2,062養殖場で生産され、58種類の魚種が認証
  • ASC認証サーモンが、養殖全体の約30%をしめている
  • ASCラベル付き製品が116か国で販売されており、前年比で17%増加

ASC認証というのは、Aquaculture Stewardship Councilによる認証です。

環境と社会への影響を最小限にした責任ある養殖の水産物である証とされます。

2023年5月のレポートでは、特筆すべきものとして、ベトナムで20万トン以上、エクアドルで12万トン以上のエビが、2021年のASC認証製品への需要増加に貢献した、とあります。

とはいえ、ASC認証がつくえびは、まだ世界で2.8%しかないとのことではありますが(養殖場の数の、なのか、エビの生産量の、なのか不明)。

参考 Seafood Legacy Times 「ASC認証年次レポートで振り返る、サステナブルシーフードの広がり」(2023/5/12)

同「ASC認証のインパクト:2023年の年次報告書から見る責任ある水産養殖がもたらす環境・社会への貢献」(2024/12/12)

残念ながら、日本では、ASC認証はまだ多くの人に知られる状況にはありません。

こうした指標が広まることで、私たち消費者も「選択」によって、未来のより良い社会のために小さな貢献ができます。

ちなみに、2022年に、ASCが、閉鎖循環型陸上養殖システムについての専用規格を新設しました。

そこには、エネルギー監視や排出量削減のための戦略策定、水産資源への悪影響最小化など陸上養殖特有の項目が含まれています。

参考 みなと新聞 「 ASCの陸上養殖新規格とは?

 

粗放養殖

また、一方で、ASC認証を受けていないものでも、「粗放養殖」を取り入れるところも出てきています。

例えば、先日私が生協で買い求めたブラックタイガーは、インドネシアで粗放養殖によって作られたものでした。

粗放養殖されたブラックタイガー
  • えびは水草やプランクトンを食べて育つ
  • えびに薬を与えない
  • 潮の満ち引きを利用して池の水を入れ替える

とあります。

らでぃっしゅぼーやのホームページの産地レポートによれば、

「現在主流になっているバナメイエビの養殖では1m²当たり、100尾ほど詰め込まれるのに対して、粗放養殖はなんと3尾程度!」

と、その密度が全く違います。

参考 らでぃっしゅぼーやHP 「エコシュリンプの産地

4 何を買うかは、未来への一票

こうして環境に配慮した商品は、価格は高いかもしれません。

でも、安く、効率的に、大量に、と食糧生産が続けられてきたことによって、環境への負荷が大きすぎる状況になってきたわけです。

そろそろ、「飽食」の時代を捨て去り、食べられる分だけを買って大切に食べ切ることを考えていかなくてはいけないのではないでしょうか。

少なくとも、生産された食料の1/3が捨てられているというところから、変えていかなくてはいけないな、と思います。

日々の小さな行動変容が求められる時代に、私たちは生きています。

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2 件のコメント

  • 安心安全の観点からひと言。
    抗生物質耐性菌の蔓延から家畜・要則現場での抗生物質使用を控える機運が広がりましたが、それもつかの間の光明で、現実は霞が関の官僚たちは天下り先確保のために化学物質を使用させる策を練っています。
    養鶏分野において年間累計3万羽の提供を受け抗生物質不使用の飼料による肥育テストを実施し成功しました。続いて、エビ養殖現場において37万尾
    の抗生物質不使用の餌による養殖テストに着手しました。
    ところが、昨年12月に省令としてエビ養殖に際しては抗菌剤を必ず使用することが義務付けられました。抗菌剤を含まない餌を製造販売した場合は省令違反で罰せられ、養殖販売した者も同様に省令違反者として罪に問われます。
    背後に厚労省と農水省の激しい利権争いを感じさせますが、そこに国民の福祉を意識させる視点はないと感じています。
    悲しい現実です。
    海外の著名なナチュラリストが日本訪問を避けたがる要因です。

    • 藤原様
       コメントありがとうございます。
       「昨年12月に省令としてエビ養殖に際しては抗菌剤を必ず使用することが義務付けられました。抗菌剤を含まない餌を製造販売した場合は省令違反で罰せられ、養殖販売した者も同様に省令違反者として罪に問われます。」については、驚くばかりです。

       

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    ABOUTこの記事をかいた人

    サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
    東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

    食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
    料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

    料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

    著書14冊。メディア出演多数。

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