2021年10月の週刊新潮で(14日号、21日号)、サクラ印蜂蜜で知られる(株)加藤美蜂園が、残留基準を超える「グリホサート」が含まれているのを知りながら流通していたことが記事になりました。
これを受けて、業界では自主回収をしたり、自社製品の品質について告知をしたりしているので、ご存知の方も多いと思います。
この問題を、一消費者としてどう考えたらいいのかを書いてみました。
(2021年12月現在)
サステナブル料理研究家、一般社団法人DRYandPEACE代表理事のサカイ優佳子です。
2011年からは特に、現代のライフスタイルに合わせた乾物の活用法の研究、発信に力を入れています。
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グリホサートとは?
グリホサートとは、世界で最も使われている除草剤の主成分です。
たまに訪れる千葉の大多喜のホームセンターでも、グリホサート系の除草剤「ラウンドアップ」が目立つ場所に多数並べられ、音楽が流れてプロモーションされているのを見かけます。
2019年度のグリホサート系除草剤の国内出荷量は、約5850トンにのぼり、農場だけではなく、公園の除草などにも広く使われています。
(参考 有機農業ニュースクリップ 「グリホサート系国内出荷量」)
このグリホサート、2015年に、WHO(世界保健機関)が「おそらく発ガン性がある」としたことで、各国で規制の対象にされるようになりました。
ただ日本では、2017年12月に、逆に規制緩和が行われています。
(出典 : コープ自然派ホームページ 「グリホサートを取り込みたくない」)
2021年12月、蜂蜜でのグリホサート残留基準が緩和された?
一般社団法人農民連食品分析センターによると、2020年7月から2021年11月までの間で、依頼者から公開の同意が得られている国産のハチミツ12検体について調べてみたところ、当時の食品安全法に定めらた基準値である0.01ppmを超えるものが2検体あったとのことです。
(参考 一般社団法人農民連食品分析センター 「国産ハチミツのグリホサート残留状況について-第2報-」)
蜂蜜におけるグリホサート残留基準値は、実はつい最近、2021年12月17日に食品安全法が改正され、0.01ppmから0.05ppmに引き上げられました。
こんな声もあるようですが、2021年10月2日を期限に厚労省のサイトでパブリックコメントを募集していたので、国内で問題が起きたからすぐに法改正をして基準値内に抑えようとしたのではないようです。
ニュージーランドで蜂蜜に残留基準超えのグリホサートが検出されたニュースが出たのが2020年7月なので、それを受けて法改正を検討し始めたと考えるのが妥当だと思います。
ちなみに、グリホサートのハチミツの各国国内基準値は
- EUでは0.05ppm
- カナダでは0.1ppm
- ニュージーランド 0.1ppm
ある意味、今までの日本の基準が、他の国の基準値に比べて低かったわけです。
食・健康ジャーナリストの小島正美氏は、
「日本のグリホサートのハチミツの基準値が0.01ppmだったのは、ハチミツは農薬を使う作物ではないため、正式な基準値がなく、最下限の一律基準値の0.01ppmが適用されていたから」
としています。
確かに、蜂や蜂蜜に直接グリホサートをかけるわけはないし、養蜂家が蜂のために育てる植物を育てる時に除草剤や農薬を使うこともないはずですよね。
ところで、ニュージーランドでグリホサートが検出された蜂蜜のうち、クローバー蜜からの検出率が第一位だったそうです(ちなみに、第二位はマヌカ)。
クローバーには、緑肥効果があります。
「緑肥」というのは、そのまま植物を土にすき込むだけで肥料のような効果が得られることをいいます。
堆肥のように発酵させてから加える手間もなく、手軽に肥料効果や土壌改善効果を見込めるために、日本でもクローバーは緑肥として使われています。
そしてそのクローバーの蜜は、ミツバチの大好物なのです。
ニュージーランドでも牧草の植え替えの時期にグリホサートが散布されることがあり、
「そうした際に散布されるグリホサートが影響を及ぼしている可能性がある」
(参考 一般社団法人 農民連食品分析センター 「「日本産ハチミツにもグリホサートが残留している可能性について」2020年8月21日)
と農民連食品分析センターはコメントしています。
日本でも、上述したようにクローバーは植えられているわけで、国産蜂蜜だから大丈夫というわけにはいかないことがわかります。
許容一日摂取量から考えると安全?
化学物質の摂取の体への影響を考える時に大切な要素の一つは、「量」です。
「許容一日摂取量」(Acceptable Daily Intake ADI)という数字があります。
食品に用いられたある特定の物質について、生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量を、体重1kgあたりで示した値で、食品添加物の安全性評価は、行政機関から独立したリスク評価機関である食品安全委員会が行なっています。
グリホサートのADIは、体重1キロ当たり1日1mgです。
改正後の基準値0.05ppmの蜂蜜を毎日食べ続けるとして、体重50kgの人で1日1000kgずつ。
これはいくらなんでも食べられる量ではありませんよね。
塩だって、ある一定量以上食べれば死に至ります。
「リスクをゼロにはできない」ことを前提にした上で、どういうバランスをよしとするのかを考えていく必要があると思います。
化学物質の摂取についてどう考えるか
娘が重度のアトピーで、いわゆる添加物を多く含む食材を食べるとてきめんに症状が悪化した経験があるので、できるだけ体に悪い可能性があるとされるものは食べたくないと考えています。
だから、**の素的なものは極力使わない方針だし、可能な範囲で農薬や添加物の使用が少ないものを選びたいとは思っています。
ただ、農家としても何かの害が広がりそうな時に一時的に農薬を使うといったことは、私たちがひどい湿疹ができたときに薬を使うのと同じで非難される筋合いのことではないと思いますし、広大な耕地であれば効率を求めて除草剤を使うこともあるのは仕方ないところもあります。
過度に反応すれば、食べるものがなくなってしまいます。
そもそも、何を食べるかを選べる立場にいることは、それだけで恵まれているという現実も忘れずにおきたいです。
上記の検査にあたった農民連食品分析センターは、
「日本でも、グリホサートは広く使用されていますが、日本産のハチミツにどの程度、グリホサートが残留しているかについて厚生労働省や農林水産省が調査、報告したものや学会などの論文は、今のところ、見つけられていません。実態の調査が求められます。」
(出典 一般社団法人 農民連食品分析センター「日本産ハチミツにもグリホサートが残留している可能性について」2020年8月21日)
「国産のはちみつで、これほどの検出頻度でグリホサートが検出されるという点で、私たちのこの報告はいままで知られていなかった実態を示した調査である」
(出典 一般社団法人 農民連食品分析センター 「国産ハチミツのグリホサート残留状況について-第2報-」2021年11月29日)
というコメントを残しています。
私たち一般人にできること
私たち消費者は、まずは現状を知ること、そして、その中で自分には何ができるのかを考えることが大切なのではないでしょうか。
少なくとも、自分の庭や畑にはグリホサートを撒くことはやめたいと思います。
人にとっては無害な量でも、ミツバチにとっては有害かもしれません。
そして、ミツバチは農業にとって大事な受粉の役割をしているのに、原因がよくわからないまま激減しています。
ミツバチが消えると、多くの農作物の受粉に大きな影響が出るとも言われているんですよね。
食から社会を見る目、持っていたいと思います。
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Keep up the good writing.