「イギリス肉食革命」を読んで

イギリス肉食革命

「肉を食べる」をテーマにしたシェアReadingの会に向けて読んだうちの1冊「イギリス肉食革命」。

子どもの頃の食卓といえば、その半分以上は魚と野菜でした。

この50年ほどの間に、日本の食卓は大きく変わり、肉の消費は大幅に増えています。

そのスタートはどこにあったのでしょうか。

「肉食革命」というタイトルに惹かれて手に取りました。

非常に読みやすく、かつおもしろい本でした。

(旧ブログ 2018年11月6日の記事から加筆修正転記)

料理のパーソナルトレーニング

ヴェジタリアンの元祖はピタゴラス!

ピタゴラスは、輪廻転生を信じており、不殺生の思想に基づいてヴェジタリアンの食事法を説いた。
ギリシャローマ時代には、それなりの影響力を持った考え方だったのだといいます。

一方初期のキリスト教には断食の伝統があり、中世には年のうち半分ほどは断食日とされていたともいいます。

時代は下り、それはゆるんでくるのですが、それでもまだ金曜は肉を食べず、魚を食べる日とされていました。

実際、私がフランスの田舎町に住んでいたときも、金曜になるとマルシェのお魚屋さんに行列ができていましたっけ!

ヘンリー8世の離婚問題から「魚の日」が形骸化?

しかし宗教改革によって、新教の多くが「魚の日はカトリックの古く悪しき伝統」としてこうした習慣を廃止しました。

特にイングランドでは、ヘンリー8世が離婚問題でカトリックと手を切ったことから、ヨーロッパの中でも最もドラスティックな形で「魚の日」は形骸化したといいます。(離婚に賛成しないならお前なんかとは手を切るって笑!)

こうして16世紀に肉食革命(=主には羊巨大化のための品種改良)が始まりました。

かつては羊毛をとるためにだけ育てられていた羊。

でも、その品質を落としたとしても、庶民用の安価な肉を提供する必要がありました。

他の家畜は農耕のための力になり、簡単に肉にするわけにはいかなかったからです。

一方、こうした動きへの反動として、ピタゴラス式食事法(後のヴェジタリアン)はまた注目を浴びることになっても行きます。

17世紀における品種改良って?

ところで、当時の品種改良はどうやって行われたのでしょうか?
さまざまな「説」も紹介されていて興味深いです。
中には、「それはありえないでしょ!」と笑ってしまうようなことも。

でも、今振り返ってみるからこそ笑えるのであって、一人一人の地道な積み重ね、蓄積によって技術が発展してきたんですね。

17世紀の初めから本格化してきた品種改良は、「改善の精神」を持って工夫を凝らしてきた、一人一人の名もない人たちの工夫の積み重ねの上に、150年後にベイクウェルという著名なブリーダーを生むことになります。

学者たちが遺伝の理論について考えるようになったのは、このタイミングからだったといいます。

一人の力ではなし得ないことが、歴史の視点でみると大きな流れとなっていることに感動すら覚えます。

肉を食べる時にちょっと考えてみたい

食は、政治、経済、宗教、環境、文化など、さまざまな要因によって変化していきます。

そうして変化した食は、社会にも影響を与えていきます。

私たちの食、社会はこれからどう変わっていくのでしょうか?

後の歴史学者からみたら、どういう時代に映るのでしょうか?

食卓に美味しい肉が並ぶとき、過去に生きた多くの人の情熱と技術の結晶であることに、ほんの少しでも想いを馳せたいと思わせる本でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

食に関するお役立ち情報はメールマガジンで発信中→ここから登録