大牟田と結んで防災食講座〜なぜ乾物が家庭備蓄にむくと考えられるようになったのか

以前、オンラインで乾物防災食講座を受講してくれた大牟田在住の方とのご縁から、NPO法人つなぎteおおむたの皆さんとネットで繋いで乾物防災食講座を開催しました。

音声でもお伝えしています。
こちらからお聴きいただけます)

目次
1 乾物を家庭備蓄に、という考え方が出てきた背景
①長期保存非常食の問題点
②ローリングストックという考え方
2 乾物を「加える」メリット
3 乾物を「加える」メリットがメリットになるためには?
4 乾物を普段から使うことは食の防災訓練


1 乾物を家庭備蓄に、という考え方が出てきた背景



①長期保存非常食の問題点

従来、家庭備蓄には、できるだけ長い期間もつ、いわゆる「非常食」を購入して準備しておきましょうという考え方が主流でした。

でも3年、5年と長く持つことが裏目に出て、その存在も忘れてしまい、いつの間にか4年、6年が過ぎてしまっていたという話もよく聞きますし、実は私にもそんな経験があります。
そして、そうした賞味期限切れの非常食が捨てられるという食品ロスの問題もまた指摘されるようになってきました。

また、他にも、
長期保存を実現するために、添加物を使わざるを得ないケースもあり、アレルギーなどを持つ人にとっては使いにくい
価格が高いので、いつ来るかわからない非常時のためだけに買い揃えることに躊躇する人も
近くのスーパーで簡単に手に入らない
普段の食事にとるにはあまり美味しいと思えないものもある
などの課題が指摘されてきました。


②ローリングストックという考え方

そんなことから、ローリングストックという考え方が提唱されるようになりました。
ローリングストックとは、回転備蓄とも呼ばれます。

備蓄したものを、普段の食事で食べ、食べた分だけ補充しようという考え方です。

例えば醤油を一本使っているけれど、もう一本なくなる前に買っておくということは、多くの人がしていると思います。
このサイクルを少し早めに、例えば半分くらいになったところで補充しておく、というイメージ。

これなら、もしもの時に「ない!」ということにも「賞味期限が切れてしまっていて食べられない」ということにもなりません。

そして、この考え方に基づいて備蓄をするなら、賞味期限が半年ほどもあれば十分に備蓄用の食材として考えられるようになってきたのです。乾物のほとんどは半年以上の賞味期限があります。

2019年3月に出された農水省の「災害時に備えた食品ストックガイド」の作成の際には、「乾物を備蓄に活かす知恵を取り入れたい」とお声がけいただき、DRYandPEACEも乾物レシピを提供させていただいています。
(PDFでご覧になれます https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook.html#01


2 乾物を「加える」メリット


乾物防災食講座では、ストックは乾物だけで十分と言っているわけではありません。
いわゆる市販の非常食や缶詰、レトルトなど、すぐに食べることができるものに「加えて」、乾物を常備することのメリットはたくさんあります。

食材のバリエーションが多い
→炭水化物に偏りがちと言われる非常時の食に、ビタミン、ミネラル、タンパク質などをプラスできます
食物繊維が豊富
→もしもの時にちゃんと「出る」ことは重要。そのためには食物繊維、特に水溶性の食物繊維が必要。海藻にはこうした食物繊維が豊富に含まれています
添加物が少ない
→基本、乾かすことで保存性が高まるので、添加物は使わずにすみます(より良い品質を保つためなどに使っているケースもあります)
安定したお手心価格
→旬の時に作るので、急な高騰などはなく、価格が安定。またいわゆる非常食に比べてお手頃価格。
普段の料理に活かしやすい
→そもそも普通の料理に使われてきたものなので、日常食に使うことができます。レシピを増やせればさらによし。
常温で長期保存できる
→半年以上持つので、ローリングストックのサイクルに乗せやすい


3 乾物を「加える」メリットがメリットになるためには?


こんなことから、乾物を家庭備蓄に加えるといいと考えられるようになってきたわけですが、その条件として、乾物を普段の食卓に活かせることが必要になります。

それは、
1)どの乾物が、もしもの時にも使いやすいかを知っていること
2)生で、あるいは戻すだけで食べられるものと、加熱が必要なものがわかること
3)レシピのバリエーションがあること
ということです。

さらに言えば、せっかくの乾物を加えるメリットを活かすために、何にどんな栄養が含まれているのかを理解しておくことも必要です。

講座ではこうしたワークも取り入れ、最後には、それぞれの方の家庭に合わせて、どんな備蓄をしていけばいいかに落とし込むところまでしていただきます。
本人や家族の好み、アレルギーの有無など、家族構成などによって、家庭備蓄の「正解」は変わってきます。


4 乾物を普段から使うことは、食の防災訓練


普段から乾物を折に触れて料理することは、食の防災訓練になる、と考えています。
フェーズフリーという考え方が広まってきましたが、これは、日常と非日常を区別しないというものです。

非日常のために備えるとなると、いつ来るかわからない未来の出来事のためにお金や労力や時間、スペースをとることに躊躇する人が実は多いために、いつまでたっても家庭備蓄が進まないという現実をどう変えたらいいのか、というところから生まれた考え方です。

日常にも価値があり、非日常にも役にたつもの。
乾物は、知識と技術を身につけておけば、そんなフェーズフリーな食材となりうるものと思います。

乾物防災食料理
この日の料理
一つの鍋で完成 捨てる水なしスピードパスタ(トマトジュースで戻す)
オレンジジュースで戻した干し人参と棒寒天のサラダ
(常温保存可能な)豆腐で戻したドライフルーツと乾燥青菜の白和え
切干し大根、わかめ、ツナ缶の混ぜるだけサラダ(缶汁で戻す)

乾物を普段から使う習慣をぜひ、一人でも多くの方に身につけていただきたいと思っています。
もしもの時に困らないだけではなく、いつもも、美味しく時短になりますよ!

*グループでお申込みいただければ、オンライン講座開催させていただきます。
お問い合わせください。https://www.reservestock.jp/page/inquiry_form/40440

<普段に手軽に美味しく食べることができる乾物料理の素材別ビデオ講座>
詳細はこちらから https://www.reservestock.jp/stores/index/21439

<乾物防災食講座のオンデマンド講座>
詳細はこちらから https://www.udemy.com/course/kanbutsu_phasefree/learn/lecture/19497070#overview

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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