災害時に備えるお米といえば、今では「アルファ化米」が定番です。
アルファ化米は、一度炊いたお米を急速に乾燥させたもの。
お湯や水を加えると、ご飯の状態に戻して食べることができます。
長期間保存できる商品も多く、家庭の備蓄食として広く利用されています。
ところが日本には、アルファ化米が登場するずっと前から、米を乾燥させて保存し、携帯する食文化がありました。
「干し飯」と「焼き米(炒り米)」です。
どちらも、そのまま食べられるうえ、水や燃料が限られる非常時にも役立つ可能性があります。
普段の時短料理にも、そしてアウトドアにも便利です。
今回は、アルファ化米、干し飯、焼き米、そして押し玄米の違いと、それぞれの活用法をご紹介します。
炊飯しないでも食べられるお米〜①干し飯(ホシイイ)
私が「干し飯(ほしいい)」について知ったのは、2011年(その時撮った写真が上のもの)。
熱湯を入れたら2分で食べることができる、とあります。(カップ麺より早いw!)
干し飯は、5世紀ごろから、戦や狩り、農作業の携帯食として使われていた長い歴史がある食材。
江戸時代には、武士や忍者、旅人の伝統的な行動食・サバイバルフードだったとのこと!
炊いたり蒸したりした米を乾燥させた保存食で、そのまま食べることもできるし、水やお湯に浸して柔らかくして食べることもできます。
私は2011年の東日本大震災をきっかけに乾物の研究を始めていたので、「日本には、こんな保存食もあったのか」と、とても興味を持ちました。
干し飯は購入できるほか、家庭でも作ることができます。
雑誌『うかたま』には、「わざわざ作って食べるほどおいしい」干し飯の作り方が紹介されています。
→「うかたま」83号 作り方はこちらで見ることができます。
炊飯しないでも食べられるお米〜②焼き米(炒り米)
山形でいただいた自家製の炒り米
2012年、山形県大井沢村を訪れた時に、村長さんからいただいたのが、自家製の炒り米でした。
玄米茶の玄米のような見た目で、甘い味をつけてあり、ポリポリした軽い食感がよい感じで、おやつに食べるとのことでした。
調べて見ると、小豆などを加えて甘い味付けにして自宅で作る地域も多いようです。
また関西では餅米を、関西ではうるち米を使って作るのが一般的なようです。
炒り米は平安時代には食べられていた
日本でいう焼き米(炒り米)は、伝統的には、新米を乾燥する前の籾のまま炒り、ついて籾殻を取り除いたもの。
「炒り米」「煎り米」「やっこめ」「やいごめ」など、地域によってさまざまな名前で呼ばれてきました。
そのままポリポリと食べることもできれば、お湯やお茶を注いで柔らかくして食べることもできます。
実は、10世紀後半(平安中期)の「落窪物語(おちくぼものがたり)」にも登場するほど歴史がある食品なのだそう。
かつては保存食、旅の携行食、農作業の合間のおやつ、神様への供えものなどとして、日本各地で作られていたんですね。
一茶の俳句にも登場!
一茶の句にも
「焼米を粉にしてすする果報かな」
「焼米の俵や袖に旅の杖」
などの句があります。
一茶は大のお茶好きでも知られています。焼き米にお茶を注いで、すすっていたのでしょうか。
「焼米の俵や袖に旅の杖」に登場する「俵の焼米」は、東海道五十三次の45番目の宿場、庄野宿(三重県鈴鹿市)の名物でした。
青い紐で編んだ握りこぶしほどの小さな俵に焼き米を詰めたもので、旅人が子どもや孫へのお土産として買い求めていたそうです。
鈴鹿市のウェブサイトに写真が掲載されています。(↓)
焼き米は、今の時代にピッタリ!
そんな古くからある食べものなのに、その特徴を改めて見ると、干し飯同様、実に今の時代にぴったり!
- 常温で保存できる
- 軽くて持ち運びやすい
- 火を使わずに食べられる
- 水がなくても食べられる
- お湯やスープがあれば短時間で柔らかくなる
というインスタント食品です。
→市販の焼き米はどうやって作られる?と疑問に思ったら、こちらに動画で紹介されています。
→焼き米の購入はこちらから
これらと似ているけれど加熱が必要〜押し玄米
九州を旅してきたという友人が、「おもしろい乾物を見つけたので」と「押し玄米」という商品をお土産にくれたのがおそらくは2015年くらい(写真・上)
この写真にあるように、水から炊いて10分で玄米粥を食べることができました。シンプルで美味しい!
押し玄米とは、玄米を蒸す、亀裂を入れる、圧力をかけるなどすることで、吸水しやすく、短時間で炊けるようにしたもので、比較的新しい商品です。
押し玄米は、基本的には加熱しないと食べられない商品になのでご注意ください。
アルファ化米との比較
一般的なアルファ化米は、お湯を注いで約15分ほど、水なら約60分ほど待って食べます(商品によって違うこともあるので、袋の説明をご覧ください)。
5年など長期間保存できる商品が多いことも、アルファ化米の強みです。
一方、干し飯や焼き米(炒り米)は、そのままでも食べられます。
断水している。火も使えない。お腹はすいているけれど、調理に使える水はできるだけ節約したい。
そんな状況では、袋を開ければ食べられる干し飯や焼き米の方が便利な場合もありそうです。
アルファ化米は、特に水で戻すと臭みが気になるという人も多いですが、水や湯以外のいろいろな水分で戻す(たとえば甘いコーヒーとか!炭酸水とか)実験をして、大学生たちに試食してもらった結果を書いている本もあるので、参考にしてみてください。
奥田和子著「本気で取り組む災害食 個人備蓄のすすめと公助のあり方」
アルファ化米の販売サイトはこちら
まとめてみると
4種類の長所や食べ方をまとめてみました。
| 種類 | 作り方 | そのまま食べられるか | 水・加熱 |
|---|---|---|---|
| アルファ化米 | 炊いた米を急速乾燥 | 製品による | 湯や水で戻す |
| 干し飯 | 炊く・蒸すなどした米を乾燥 | 食べられるが硬い | 戻すと食べやすい |
| 焼き米 | 籾のまま炒り、殻を除く | 食べられる | なくても食べられる |
| 押し玄米 | 玄米を加熱・加圧などで加工 | 基本的に食べられない | 基本的に加熱が必要 |
名称や製法、調理方法、賞味期限は商品によって異なります。購入するときは、必ず商品表示を確認してください。
普段の食卓では、時短食材として活躍
干し飯や焼き米、災害が起きるまでしまっておかず、普段から使ってみませんか?
そのままおやつやおつまみにしたり、お茶をかけてお茶漬け風にしたり、味噌汁やスープに入れれば、簡単なお雑炊やリゾット風の一品にもなります。
忙しい朝、少しだけ何か食べたい時、夜食が欲しい時にも便利です。
炊飯するほどではないけれど、温かいお米料理が食べたい。そんな場面で使えそうです。
普段から食べ、減ったら買い足しておけば、それがそのままローリングストックになります。
登山やキャンプなど、アウトドアにも
干し飯、焼き米は、登山やキャンプなどのアウトドアにも向いています。
軽くて持ち運びやすく、そのまま食べられるので、行動中の携行食に。
お湯が沸かせる場所なら、スープや味噌汁に加えるだけで、手軽な朝食や温かい一品になります。
一般的なアルファ化米のように、一定量のお湯や水を加えて長く待つ必要がないため、水や燃料を節約したい場面でも便利です。
天候が悪くて調理できない時にも、袋を開ければすぐ食べられる安心があります。
- そのまま行動食に
- カップスープに加えて簡単リゾットに
- 味噌汁に入れて温かい朝食に
- 牛乳やヨーグルトと合わせてシリアル風に
- 予定外に帰宅が遅れた時の予備食に
アウトドアで一度食べてみれば、味や硬さ、必要な量、好みの戻し方も分かります。その経験が、そのまま災害時の備えにもなります。
なお、乾いたまま食べる場合にも飲み水は用意し、湿気を防ぐ袋や容器に入れて持ち運んでくださいね。
普段の食卓、アウトドア、そして非常時。
三つの場面を分けずに使えることも、干し飯や焼き米の大きな魅力です。
熊本では、今も焼き米が作られている
熊本県山都町では、焼き米が伝統食として今も作られていると、雑誌「料理通信」で紹介されています。
籾を水に浸し、釜で炒り、精米した後にもう一度炒って、平たく潰す。材料は米だけ。
熊本の焼き米は市販もされており、商品によっては約1年間保存できます。
ただし、賞味期限や保存方法は包装によって異なるため、購入した商品の表示を確認してください。
5年、10年としまっておく非常食ではなく、日常的に食べながら1年ほどで無理なく循環させる。
焼き米は、そんな備蓄に向いているのだと思います。
焼き米(炒り米)を家庭で作る方法
家庭では、白米や玄米を水に浸し、水気を切ってからフライパンでじっくり炒る「炒り米」を作る方法もあります。
ただし、家庭で作ったものは、市販品のように賞味期限が検査されているわけではありません。
長期備蓄用と考えず、湿気を避けて密閉し、日常の料理で早めに使い切るのが安心です。
また、家庭で作る炒り米は、炒り方によって硬さや火の通り方が変わります。
そのまま食べるのか、スープやお粥にするのかも含めて、実際に作って確かめてから備蓄に加えることが大切です。
非常時に初めて食べるのではなく、普段から自分に合う作り方や食べ方を知っておく。それも備えの一部です。
海外にもある「乾燥させたお米」の知恵
内モンゴルで出会った炒り米
を加熱・乾燥させ、保存しやすく、手軽に食べられるようにする知恵は、日本だけのものではありません。
2014年に内モンゴルを訪れたとき、現地の炒り米に出会いました。
現地では、磚茶(日本語読みでは「せんちゃ」、現地では「ジュアンチャー」)を飲むときに炒り米を加え、玄米茶のような感覚で楽しんでいました。
帰国後、炒り米を煎り大豆と一緒にヨーグルトのトッピングにしてみたところ、食感がよく、とてもおいしかったです。
ネパールのチウラ、インドのポハ
ネパールには「チウラ」、インドには「ポハ」と呼ばれる、平たく加工した乾燥米があります。
おかずと一緒に食べたり、ヨーグルトと合わせたり、炒めて朝食にしたりと、日常の食卓で活用されています。
世界各地に、炊飯の手間を減らし、米を保存し、いつでも食べられるようにする工夫があるのです。
以前、こちら(↓)の記事に書きましたので、よかったら読んでみてくださいね。
昔の知恵が、これからの備えになる
農林水産省は、最低3日分から1週間分×人数分の食品を家庭に備蓄することを勧めています。
でも、非常時にしか食べないものを大量にしまっておくと、賞味期限を切らしてしまいがちです。食べ慣れていないものは、いざという時に口に合わない可能性もあります。
だから私は、普段食べているものが、そのままもしもの備えになる「ローリングストック」をおすすめしています。
干し飯や焼き米は、昔から日本人が食べてきた保存食でありながら、
「そのまま食べられる」
「短時間で料理になる」
「普段も非常時も使える」
という、今の暮らしにぴったりの食材です。
アルファ化米だけでなく、これらも備蓄の選択肢に加えてみる。
忘れられかけていた伝統食が、これからの私たちの食卓と防災を、少し豊かにしてくれるかもしれません。
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