ごまの旬、知っていますか?
ごまの旬がいつかと問われて、パッと答えられる人はあまりいないのではないでしょうか。
実は、ごまの旬は9月〜10月の秋なんです。
日本の食卓に欠かせないごまですが、国産ごまの自給率はわずか0.1%未満(消費量の99.9%以上が輸入)。
国産ごまの収穫風景を目にすることは滅多になく、意識しにくいのも無理はありません。
ふりかけメーカーの社長さんから聞いた「ごま調達」の苦労
2010年代のことになりますが、広島の学校で食育の講演をさせていただいた時に、PTAの方々とお話する機会がありました。
そのうちのお一人が、ふりかけメーカーの社長さんでした。
「ごまの輸入確保には本当に困っているんですよ」
とお話しされていたのがとても印象に残っています。
その会社ではパラグアイからごまを輸入されていると伺い、当時はとても驚きました。
日本のごまは、世界約30ヵ国からやってくる
実際、ごまの輸入先は南米やアフリカの国々を中心に、約30ヵ国にも及びます。
「ごま=中国」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
ところが中国は、ごまの生産国であると同時に、年間100万〜140万トンを超えるごまを輸入する世界最大級の輸入国でもあります。
中国国内でも大量のごまが生産されていますが、それをはるかに上回る国内需要があるため、現在では世界中、特にアフリカ諸国から大量のごまを買い付けています。
その動きは、世界のごま相場にも大きな影響を与えています。
日本の主な輸入先はアフリカと中南米
日本の輸入相手国のデータを見ても、ナイジェリアが全体の約35〜40%と大きなシェアを占めています。
そのほか、ブルキナファソ、タンザニア、モザンビーク、パラグアイなど、アフリカや中南米の国々が上位を占めています。
普段、スーパーで何気なく手に取っているごまが、これほど遠くの国々から届いていると考えると、少し見え方が変わってきます。
政情不安や天候も、ごまの収穫に影響する
伊藤忠商事のごま担当者の方が、食品新聞社の2022年12月23日付の記事で、カントリーリスクや天候による影響について言及されています。
たとえば、黒ごまの主産地であるミャンマーでは、クーデターによる社会情勢の悪化が農業に影響。
白ごまの主産地の一つであるエチオピアでも、民族紛争による作付けや収穫への影響が懸念されていました。
さらにモザンビークでは、播種時期の雨の遅れやその後の天候不順によって、収穫が例年より遅れる状況も報告されています。
ごまは農作物ですから、当然ながら天候にも左右されます。
そこに政情不安や物流の問題まで重なれば、安定して調達することは簡単ではありません。
気候変動、物流、そして世界的な買い付け競争
近年では、こうした政情不安だけでなく、気候変動による天候不順、海上物流のリスク、さらには中国をはじめとする他国との買い付け競争など、ごまの調達環境には常に緊張感があります。
そのため、メーカーや商社は毎年の状況を見ながら、輸入する国を柔軟に切り替えてごまを確保しています。
「いつでもスーパーにある」という状態は、実は多くの人の努力によって支えられているのです。
我が家のごまは、パラグアイとボリビア産でした
そこで、我が家にあるごまのパッケージも改めて確認してみました。
黒ごまはパラグアイ産、白ごまはボリビア産でした。
原産国の表示は、賞味期限などの横に別枠で印字されています。
時期やロットによって原産国が変わるからこそ、パッケージそのものにあらかじめ印刷するのではなく、後から印字する形式をとっているのでしょう。
普段は見過ごしがちな小さな表示ですが、そこにもごまをめぐる世界の事情が表れているように感じます。
なぜ国産がこれほど少ない?
では、なぜ日本ではごまの生産がこれほど少ないのでしょうか。
手間がかかる
理由のひとつは、とにかく手間がかかる作物だからです。
ごまは、成熟するとさやが開いて中の粒がこぼれやすくなります。
そのため、収穫のタイミングを見極め、刈り取り、乾燥させ、脱穀し、さらに小さなごま粒に混じった葉や茎、砂などを取り除く必要があります。
米や大豆のように機械化が進んでいる作物に比べると、どうしても人の手に頼る部分が多くなります。
しかも、ごまは一粒一粒がとても小さいため、収穫した後の選別にも、かなりの手間がかかります。
輸入ごまに、価格で勝てない
もうひとつは、手間がかかるわりに、輸入ごまと価格で競うのが難しいということ。
海外では広い土地で大量に生産されています。それに対して日本では、人件費も高く、小規模栽培になりがちです。
そうなると、どうしても国産ごまは高価になります。
収穫期が長雨や台風の時期と重なる
さらに、ごまはもともと高温で比較的乾燥した地域に適した植物です。
日本の夏は十分暑いのですが、問題は収穫期。ちょうど秋雨や台風の時期と重なります。
長雨で湿害が起きたり、背の高い株が台風で倒れたりすることもあります。
加えて、栽培初期のごまは雑草に負けやすく、草取りにもかなりの労力が必要です。
こうして考えると、
「日本でも育つのに、なぜ作らないの?」
という単純な話ではないことがわかります。
育てることはできても、収穫して商品として安定的に出荷し、農家の仕事として成り立たせるところまで考えると、いくつものハードルがあるのです。
だからこそ、私たちが目にする国産ごまはとても貴重。
スーパーなどで「国産ごま」を見つけたら、その小さな一粒の向こう側に、かなりの手間がかかっていることを思い出さなくては、ですね。
当たり前にある「ごま」の向こう側
ごまは、「いつでも当たり前に手に入る食材」というイメージが強い食品です。
けれど、私たちが日々の料理に香ばしい一匙を加えられる裏には、世界各地でごまを育てる農家の方々がいて、そのごまを確保するために世界中を駆け巡る商社やメーカーの方々がいます。
世界中から届く、貴重な恵み。
当たり前と思わず、大切に、そして美味しく味わいたい。
改めてそんなことを感じた「ごま事情」でした。







