稲庭うどんは発酵食品だった?

稲庭うどん

稲庭うどんは、秋田県湯沢市稲庭町発祥の細いうどんです。

伝統的には手延べで作られ、その独特の風味と食感が多くの人々に愛されています。

稲庭うどんの美味しさの秘密は、うどんに含まれる小さな気泡にあると「稲庭うどん 小川」の社長 小川選子さんに伺い、興味を持って調べてみたところ、稲庭うどんは実は発酵食品であるとする論文を見つけました。

乾物クイズに挑戦

稲庭うどんとは?

まずは、稲庭うどんとはどんなものかを確認しましょう。

江戸時代の初期に稲庭地区小沢に住んでいた佐藤市兵衛という人が、地元産の小麦粉を使って干しうどんを製造したのが始まりとされています。

ざっと350年の歴史がある伝統食で、日本三大うどんの一つに挙げられる、秋田県の名産です。

その知名度ゆえに、偽物も多く出回っているとのことで

1)断面の縦横比が1:2~1:3
2)断面に気泡が観察されること
3)十分熟成すること
を規準とするべきではないかという意見もあります。

稲庭うどん GI申請中

ちなみに、2024年2月に、稲庭うどんは、秋田稲庭うどん協議会が地理的表示保護制度(GI申請)を申請しました。

「GI=地理的表示保護制度」とは、その地域ならではの気候風土や伝統のなかで、長年育まれてきた特産品を、国が「地域の知的財産」として保護する制度。

品質など一定の基準を満たしたものが登録されます。

  1. 原材料は小麦粉と食塩、打ち粉として使われるでんぷんの3種類のみ
  2. 手延べ製法
  3. 県内で製造されたもの

という条件で申請されたようです。

参考 NHK 「稲庭うどん GI登録へ協議会

稲庭うどんの製法は?

秋田県稲庭うどん協同組合のHPには、稲庭うどんの製法を以下のように規定しています。

(*稲庭うどん協議会の更なる発展のために平成13年に秋田県稲庭うどん協同組合が誕生。2つは競い合うものではないようで、ちょっとホッとしました)

原料 小麦粉・食塩・澱粉(打ち粉)
加水量 小麦粉に対して食塩水 55%以上
作業 1日目・・・生地を一晩熟成する
2日目・・・ 小巻した生地を手縛いにより加工し、1時間ほどの熟成後つぶし、さらに1時間ほどの熟成後、手作業による延ばしを行う。
3〜4日目・・・本乾燥を行う。

一般的には4日で仕上げることになります。

会社によっては、グルテンをよりしっかり形成させるため、熟成にさらに1日多くかけるところもあるようです。

稲庭うどんの気泡は酵母の発酵で作られる

稲庭うどんに含まれる気泡は、15%以上の食塩濃度でも増殖できる耐塩性の発酵性酵母Hyphopichia burtoniiの発酵によって作られることがわかったのだそうです。

この気泡は小麦粉に食塩水を添加し、手延べ製麺を繰り返すことにより、集積された耐塩性酵母がアミラーゼを保有し、可溶性澱粉を発酵し炭酸ガスを発生することにより生成し、稲庭うどんは伝統的な発酵食品であること(が明らかになった)

出典
おもしろいのは、この気泡は、手延べ製法によってのみ生じ、機械製麺や手打ち製麺では生まれないのだそうです。
そして、手延べ製法でしっかり熟成期間をとることで、気泡がちゃんとできることになります。

気泡があることで、こんな違いが

茹で上がりがはやい

この気泡があるおかげで、稲庭うどんは茹で上がりが3分程度と早いです。

茹で時間が短いのは魅力の一つですよね。

歯応えが良い&持続する

パスタでよくアルデンテの食感に茹で上げると言いますよね。

あの食感は表面の水分が80%程度だけれど内部の水分が50%と硬い、その差(=水分勾配)によって感じるのだそうです。

この場合、茹でてから時間が経つと「勾配」がなくなるので、ほとんどコシを感じなくなります。

一方で稲庭うどんの場合は、30分後でも歯応えがしっかりと残ります。

むしろ茹でた直後よりも一層の食感が楽しめるのだそう(上記論文参照)。

これ、びっくりですよね。

茹でおきしても空隙(気泡)はグルテンの構造の中に閉じ込められています。
そのために時間が経過しても空隙は残り、歯応えも残るのだそうです。

稲庭うどんを楽しもう

稲庭うどんなんと発酵食品だった!という稲庭うどん。

ぜひ美味しくいただきましょう!
(この写真、稲庭うどん自体が見えないけど、美味しくいただきました)

 

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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