日本人が一番食べている果物は、バナナ。
私が子どもの頃は、商店街のお祭りで、バナナの叩き売りをしていたものでした。
そのおにいちゃんの声の調子がおもしろくて、いつも楽しみでした。
そんなバナナ。
親の世代にとっては高級品だったようですが、今や庶民の果物。
でも、これがナフサの供給不足で、再び高級品になってしまうかもしれない危機的状況にあるのだそうです。
目次
なぜ?バナナが「青いまま」海を渡ってくる理由
日本で一番消費されている果物、バナナ。
実はその99%が海外からの輸入品で、年間約100万トンもゆにゅうされています。
店頭でよく見るのは、「キャベンディッシュ」という種類がほとんど。
ただ、その他にも、小さめの「セニョリータ(モンキーバナナ)」、赤みがかった「モラード」、料理用の「カルダバ」など、実はたくさんの種類があります。
バナナは、主にフィリピン(約75%)やエクアドル、ベトナムなどから運ばれてきます。
でも実は、日本の港には必ず「緑色の状態」で到着します。
その理由は日本の植物(農業)を守るため!
【植物防疫法のルール】 バナナが育つ温かい地域には、果物の重大な害虫である「ミバエ類」が生息しています。
この虫が日本に侵入するのを防ぐため、法律で「熟した生のバナナ」の輸入は禁止されているのです。
そのため、虫がつきにくい未熟な「青い状態」で輸入しなければならない決まりになっています。
参考 : 農水省 「植物防疫情報」
プロの魔法?「追熟(ついじゅく)」とエチレンガス
青くて硬いバナナは、そのままでは渋くて食べられません。
これを美味しく黄色く変身させるプロセスを「追熟」と呼びます。
ここで必要なのが「エチレンガス」です。
エチレンは、果物の成熟を促す「植物ホルモン」の一種。
バナナ自身からも自然に発生しているし、リンゴなども多く発生させることで知られています。
*リンゴとバナナを一緒においておくと、熟すのが早くなるのはこのためです。
追熟のプロセス
- 専用の部屋へ:運ばれてきた青いバナナを専用の部屋に積み込む。
- エチレンの力を借りる:最初の24時間程度、エチレンガスを室内に注入。
- じっくり熟成:その後、温度や湿度を細かく調整しながら、全体でおおむね1週間かけて、私たちがよく知る黄色いバナナに仕上げる。
昔は炭火による燻製やアセチレンガスが使われていましたが、危険性が高いため、現在の安全なエチレンガスを使う方法に。
すでに30年以上、この技術が守られています。
家でできないの?
「家でも青いバナナを熟成できるのでは?」
と思いませんか?
でも実は、温度や湿度の管理が非常に難しく、家庭では「外側は青いまま中身が腐ってしまう」「甘くならない」といったことになりがちなのだそうです。
お店で見かけるバナナは、まさにプロの腕の賜物というわけです。
※なお、エチレンガスは、バナナだけでなく、アボカドやキウイ、ラ・フランスなどの追熟や、ジャガイモの発芽を抑えるためにも使われています。
バナナが食べられなくなる!?石油(ナフサ)との意外な関係
今、「バナナが食べられなくなるかもしれない危機」少なくとも、「今までと同じような価格では、食べられなくなるかも?」にあります。
実は、「石油の供給ストップ」がバナナの危機に直結するのです。
追熟に欠かせないエチレンガスは、原油を蒸留してできる「液体状のナフサ」が原料。
ナフサを約800度で高温熱分解することで作られています。
*全体の約30%がエチレンになります。
もし、ナフサの供給が止まって国産のエチレンガスが不足してしまうと、大変なことが起こります。
- 別のルート(中国産など)からの調達を検討せねばならず、ガスの価格が今までの10倍になってしまう可能性がある。
- 調達のめどが立たなければ、バナナを美味しく追熟させることができなくなってしまう。
つまり、「ナフサ(石油製品)がないと、私たちは美味しいバナナを今までのようには食べられなくなる」という意外なつながりがあるのです。
食卓のバナナから世界を見てみよう
手頃な果物として、何気なく食べているバナナ。
その裏には、日本の農業を守る検疫の仕組み、化学工業が支えるガス供給、そして国内外の流通やプロの追熟技術があるんですね。
次にバナナを食べるときは、ぜひ「きれいな黄色」になるまでの旅路と、それを支えるたくさんの技術に感謝しながら味わってみてくださいね!







